日本酒の偽造を抑止する「開封検知機能付きNFCタグ」の開発と事業化を支援 « アーキタイプ株式会社

日本酒の偽造を抑止する「開封検知機能付きNFCタグ」の開発と事業化を支援

アーキタイプ株式会社では、株式会社サトーが提供する「日本酒業界向けソリューション」において、RFIDを活用して開封を検知する「開封検知機能付きNFCタグ」の開発と事業化を支援しました。 社内外に多数のステークホルダーが絡む本プロジェクトは、どのように進められたのでしょうか。株式会社サトー 営業本部 フード市場戦略部の岡 友哉氏、サトーホールディングス株式会社 事業開発部 近藤哲史氏、と、本プロジェクトを担当した田代一馬に、サトーホールディングスのオフィスにて、インタビュー形式での取材を行いました。

RFIDを人手不足や効率化の課題解決の糸口に

――まずは「日本酒業界向けソリューション」について、概要をお聞かせください。

岡様 RFID(ICタグ)を内蔵したラベルを日本酒の瓶やケース等に貼り付けることで、開封検知や温度管理、トレーサビリティなどを可能とするソリューションです。RFIDに記録された商品情報や位置情報などを無線端末で読み取ることで、さまざまな課題解決を可能としています。

開封検知については、瓶のキャップ部分に「開封検知機能付きNFCタグ」を内蔵したラベルを貼り付けることで実現しています。キャップを開封してラベルを破ると、タグから読み取れる情報が「未開封」から「開封済」に変わる仕組みです。ラベルにNFC対応のスマートフォンをかざすことで簡単に開封を検知できるため、「開封済の瓶に別のお酒を入れて流通させる」といった不正を抑止することが可能になります。

――本ソリューションは、どういった経緯から生まれたのでしょうか。

近藤様 弊社は1940年に創業し、高度経済成長からはラベルやバーコードに関する製品群によって成長してきました。2000年代にRFIDが登場して以降は、長年培ってきたラベル加工技術を強みに、RFIDによってモノの動きを追跡する「タギング」に注力してきました。

岡様 RFID事業をさらに拡大しようとするなかで、2020年に経済産業省が主導した実証実験(※1)に参加したことが、本ソリューションのきっかけとなっています。人手不足や効率化に悩む日本酒業界において、RFIDがその解決の糸口になるのではと考えたのです。

※注1:RFIDを活用したサプライチェーン効率化・価値創造可能性調査

――アーキタイプは、どのタイミングから本ソリューションに携わってきたのでしょうか

田代 日本酒業界をターゲットにする少し前からですね。「食品事業におけるトレーサビリティを中長期的に伸ばしたい」という要望をいただき、RFIDに関する新規事業の探索や、ビジネス化に向けた構想などに関わらせていただいておりました。

サトーホールディングス株式会社 事業開発部 近藤哲史氏(24年2月取材時)

偽造防止に強いニーズがあった「開封検知」の機能

――日本酒業界をターゲットにしてからは、どのようにプロジェクトを進めていったのでしょうか。

岡様 まずは酒造会社へのヒアリングからスタートしました。弊社としては「開封検知」の機能に非常に高いポテンシャルを感じていたのですが、本当にニーズがあるのだろうかと。実際に田代さんも一緒に酒蔵へうかがいましたよね。

田代 そうでしたね。日本酒「梵」を手がける、福井県の加藤吉平商店様にうかがいました。デモをお見せしたところ好感触で、「すぐにでもやりたい」と。「梵」は世界100ヶ国以上に輸出されていることもあり、海外の偽造品対策(※2)には頭を悩まされていたようなんですね。ニーズの把握は事業開発でもコアな部分にあたるのですが、ここまで開封検知が強く求められていたとは予想外でした。

※2:「梵」の空き瓶に別の酒に入れられて流通するといった被害があった

――開封検知機能の開発に進むにあたり、当時はどのような課題があったのでしょうか。

岡様 「破ることで情報が変わる」というRFIDの仕組み自体は、既に存在していました。しかしRFIDを内蔵したラベルは、単に既製品を用いればよいというものではありません。RFIDのアンテナやチップは用途によって変わりますし、ラベルも形状やデザインなどの設計も必要。開封検知機能付きラベルを作るには、RFIDとラベル、双方の技術や品質を備えた開発が必要でした。

近藤様 そのためには、社内外の各ステークホルダーとの連携が必至でした。社内にはRFIDの開発や販促などを一貫して手がける「RFID事業本部」と、ラベルをはじめサプライ製品全般を製造する「モノづくり本部」があり、両部門の“プロの力”が求められます。また社外においては、部材の調達先である外部サプライヤーの選定や確保はもちろん、エンドユーザーからの要望も吸い上げなければなりません。

完成までには数多くのプロセスがあり、各ステークホルダーと調整を重ねながら、それらを抜け漏れなく進めねばならない。この難題を乗り越えるうえで、アーキタイプ様には多くのご支援をいただきました。

株式会社サトー 営業本部 フード市場戦略部の岡 友哉氏(24年2月取材時)

“力仕事”にこそ新規事業立ち上げの本質がある

――社内外にステークホルダーが多数あるなか、アーキタイプではどのようにアプローチをしていったのでしょうか。

田代 何か特別なアプローチを行ったわけではなく、まずは「いつまでに誰が何をすればいいのか」を整理しました。これを週1~2回、関係者全員で進捗確認しながらアップデートし、現在地とゴールを可視化できるようにしました。
工夫したのは、旗振り役の近藤様と、誰をどのように巻き込むことでプロジェクトが円滑に進むかを一緒に検討させていただいた点でしょうか。当たり前のことですが、社内のことは社内の方が一番良くご存じですし、RFIDやラベルについては皆さんプロフェッショナルでいらっしゃいます。そこへ「売れるから早く作ってほしい」と頭ごなしに言っても、よい製品は生まれません。皆さんの知見を100%引き出しながら、同じ方向を向いてプロジェクトを進めていくのに何が必要なのかを考えながら進めていきました。

近藤様 今回、アーキタイプ様から学ばせていただいたのは、新規事業の立上げはスマートな面だけではなく、どちらかというと泥臭く、粘り強い“力仕事”にこそ、本当の価値が宿るんだということでしたね。

たとえば、お客様に接していない部門はどうしてもコンサバティブになりがちです。部材の調達ひとつとっても「本当に売れるんですか?」と難色を示されることもあります。特に今回は、工場などの限られたシチュエーションではなく、一般のお客様がそれぞれの環境でRFIDを読み取るためことになるため、要求仕様の違いから現場にはさまざまな葛藤があったんです。

そうしたときは、こちらからプッシュしすぎても、プッシュしなさすぎても良くない。お互いの顔を立てながら一番よい落としどころを見つける、そのプロセスの大切さに改めて気付かされましたね。

また、「経営層を巻き込む」のも非常に重要でした。経営層の認識があると社内の動きも変わってきますから、適切なタイミングでプレゼンをあげるなどのアクションも積極的に行っていました。その際、田代さんからも「この数字を出すなら、こういうまとめ方なら説得力が出ます」など、勘所についてサポートをいただきました。

アーキタイプ株式会社 田代一馬

事業を創出する“実践者”としてプロジェクトに向き合う

――「開封検知」の機能は、開発スタートからどれくらの期間でリリースに至ったのでしょうか。

近藤様 最初のデモから半年ほどでした。RFIDを組み込んだラベルとしては、早いほうです。新規案件ということもあり、技術的な不具合をはじめトラブルも多かったのですが、よく漕ぎ着けたと思います。

――今回のプロジェクトを振り返って、改めてアーキタイプに感じることを率直にお聞かせください。

近藤様 こちらの目線に立って考えてもらえている、と感じました。「それなら他社のこういう事例があるはずなので持ってきます」と状況に応じて事例をたくさん提示していただいたり、サトー全体のことを理解したうえで客観的にコメントをいただいたり。単に市場調査や事例などのデータを提示して終わりなのではなく、しっかり寄り添って、社内のプロセスまで入り込んで考えてくださるなと。

田代 ありがとうございます。弊社では、バリューのひとつに「Be a player」を掲げています。外部からコンサルタントとして関わるだけでなく、“実践者”として事業開発に向きあうことを大事にしているんです。ですので、とても嬉しいお言葉をいただけたと感じています。

――最後に今後の展望についてお聞かせください。

岡様 まずは開封検知をはじめ、日本酒業界にてトレーサビリティや温度管理などのソリューションを提供していければと考えています。また、トマトジュースなど他の業種業態でも実績が出てきておりますので、横展開についても進めているところです。

近藤様 アーキタイプ様のノウハウを吸収できたおかげで、現在は社内の仕組みを構築し、風土も醸成され、事業として自走化できています。今回の開封検知に限らず、RFIDにはまだ多くの可能性がありますので、今後もぜひお力添えいただければと思っています。

【関連リンク】
●サービスページ「セキュリティシール」:
https://www.sato.co.jp/products/primarylabel/security/

●資料「日本酒業界向け ソリューション」:
https://www.sato.co.jp/products/primarylabel/security/pdf/sake_leaf.pdf

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