積水化学の新事業創出にチームの一員として伴走。事業化への実証実験をフォロー
アーキタイプ株式会社は、積水化学工業株式会社が推進する新規事業創出プログラム「C.O.B.U.アクセラレーター」の事務局運営支援だけでなく、起案者への伴走支援も行っています。起案者のアイデアやプランのブラッシュアップ、事業開発スキルの向上など、起案者自身に伴走しながら事業案の実現に向け、多角的な支援を実施しています。「C.O.B.U. アクセラレーター2023」の選考を勝ち抜いた新事業開発部の佐藤弘瑛氏、そしてアーキタイプ株式会社の田代一馬、玉井雄起、三好啓太にインタビューを行いました。
200を超えるアイデアが寄せられたC.O.B.U. アクレラレーター2023
――まずは佐藤さんにお伺いします。新事業創出を試みるC.O.B.U.アクセラレーターに応募しようと考えたきっかけは何だったのでしょうか。
佐藤様 正直に言ってしまうと、最初はオリジナルタンブラーなど参加賞としてもらえるノベルティが目当てだったんです(笑)。ただ、私は応募する直前の2年間、育休を取っていたので、その間にさまざまな事業案を考えてメモしていました。職場に復帰したタイミングでちょうどC.O.B.U.アクセラレーターの募集があったので、蓄えていたアイデアの中から社内で実現できそうなものを4つ選んで応募しました。
積水化学工業株式会社 新事業開発部 イノベーション推進グループ 佐藤弘瑛氏
――伴走するアーキタイプ側としては、最初に今回の事業案を見た時、どのような印象を持ちましたか。
玉井 まず、C.O.B.U.アクセラレーター2023では206件のアイデアが寄せられました。佐藤さんのように応募特典に惹かれて応募された方も意外と少なくないでしょうし、ご自身の業務まわりで、ふと思いついた改善案などを具体化させて応募される方も多く見られました。そうした数々のアイデアの中でも、佐藤さんの事業案については、早いうちに「これは面白いな」と感じたのを覚えています。
――その事業案、ステージ1からステージ2へ進むプロセスで最も苦労したことは何でしょう。
佐藤様 たとえば、自分の業務に直結するテーマで事業案を出した人であれば、日常の業務の中でも関係各所に必要な情報をヒアリングできるのだと思います。しかし私の場合はそうではなかったので、自分の業務や子育てもある中で、いかに時間を捻出するかということに苦労しました。
佐藤氏とC.O.B.U. アクセラレーター事務局、本プロジェクトを担当したアーキタイプのメンバー
ステージ2を歩む過程で、チームとしての一体感が芽生える
――事業案を具体化させ、ブラッシュアップしていく過程について、アーキタイプの皆さんはどのような思いで伴走されていましたか。
三好 先ほどご自身でもおっしゃっていたように、佐藤さんのケースに関しては、関係者へのヒアリングの量が非常に多く、おまけにその内容が具体的だったことから、検証活動を進めやすかったですね。この事業案に関わる現場の方々からも、「それは面白いアイデアだね」と好意的な反応もよく聞かれたのが嬉しかったです。
玉井 そうした佐藤さんご自身の熱量に置いていかれないように、こちらもできる限り具体的な動きを見せなければ、と突き動かされる想いもありました。そこで将来の見込み顧客をリストアップして、片っ端から「ヒアリング・実証実験にご協力いただけませんか」と電話やメールでオファーをしたんです。
佐藤様 あれは本当に助かりました! そうして得られた協力者さんたちをスプレッドシートで一覧化していただいたことで、どこがどういうステータスなのかがひと目で分かるようにしていただけたのもありがたかったですね。それに私は不慣れなせいか、いきなり核心をついた質問ばかりして警戒されてしまうことが多かったので、アーキタイプさんの自然なコミュニケーションを横で見られたのも、とても勉強になりました。
アーキタイプ株式会社 玉井雄起
――そのステージ2の段階で、とりわけ印象的だったことは何ですか。
田代 ステージ1がコンセプト検証の段階であるとしたら、ステージ2では実際にものを作ってみる段階になります。つまり、より深い検証を行うフェーズで、佐藤さんが起業家だとしたら、我々は最初に参画するメンバーのつもりで、一緒に市場を切り開いていく意識で活動していました。それもあってなのか、この辺りからチームとして一体感が出てきたのは印象深いですね。
佐藤様 その時期に、私がアーキタイプの皆さんを不意に“サブメンバー”と表現したら、田代さんが「いや、正式メンバーにしてくださいよ!」と言ってくださったのを、すごく覚えています(笑)。実際、一緒に何度も現場に同行してくれて、積極的に手を動かしてくれたり、現場の空き時間にヒアリングしてくれたりと、非常に近くにいるメンバーという感覚がありました。
――そして事業案は無事にステージ2をクリアし、事業化フェーズへ向かいます。アーキタイプとしてステージ2において、気をつけていたことは何ですか。
田代 我々としては佐藤さんをリーダーとする座組ではあっても、ただ指示を待っているようではいけません。こちらからも「この点については大丈夫ですか?」、「こういう部分の検証はどう考えていますか?」などと適宜サジェストすることで、佐藤さんの頭の中からより良いアイデアを引き出していくことを意識していましたね。
――佐藤さんに伴走していて気付いたことなどがあれば教えてください。
田代 今回の事業案に関わる領域については、積水化学さんの社内にも詳しい方がたくさんいらっしゃいました。そうした方々を、次々にコミットさせてしまう“巻き込み力”のようなものは、すごく感じましたね。
佐藤様 そこはもう、この事業案を実現させたい一心でした。
田代 そうなんですよね。佐藤さんは「これをやるためには、こうすればいい」という、シンプルな前提を常に持っているので、我々も動きやすかったです。
アーキタイプ株式会社 田代一馬
――佐藤さんから見て、伴走者としてのアーキタイプにどのような印象をお持ちですか。
佐藤様 私が勝手にいろいろ考えたり動いたりする中で、ちゃんとダメ出しもしてくれるというか、こちらを“お客さん”として扱わずに、適切な方向に導いてくれる存在だったと感じています。また、ヒアリング内容などを、私がメモに走り書きしたものを共有すると、週明けには玉井さんが整理してくれていて、「これを元に次はこうしていくのはどうでしょうか」と向かう先を明確にしてくれたのも大きかったと思います。
今回の経験を次のC.O.B.U.アクセラレーターに生かす
――皆さんが今回の事業案にはっきりと手応えを感じたのは、どのタイミングですか。
三好 私はヒアリング・実証実験のお願いでテレアポをしていた際に、飛び込みで電話をかけているのに意外と好意的な反応が得られていたので、「つまりそれだけこのアイデアには魅力があるのだな」と感じていました。
田代 確かにそれはあるよね。実際に悩んでいる方が大勢存在していることが分かったというか、間違いなくニーズはあるんだと思えました。
佐藤様 私はいまもまだ、確信めいたものは持てていないのが正直なところです。もちろん、実現に向けてこれからも手を尽くすわけですが、まだまだクリアしなければならないことは多いですから。でも、ヒアリングの最中に「販売が決まったらぜひ具体的な金額を教えてください」と言ってもらえることもあり、それが励みになっています。
アーキタイプ株式会社 三好啓太
――事業化に向けて邁進するいま、アーキタイプとのここまでの取り組みを振り返って、佐藤さんはどのように感じていますか。
佐藤様 新規事業に携わる経験がないので、分からないことだらけの中でやってきました。新規事業や起業に関する本なども読みましたが、実際に落とし込むのはなかなか難しかったです。だからこそ、要所要所で具体的なアドバイスをくれる存在がそばにいるのは、本当に心強かったです。
――一方、すでに次のC.O.B.U.アクセラレーター2024もスタートしています。アーキタイプとしては今回の経験を踏まえ、次の起案者に対してどのようなサポートを行っていくのか、最後に抱負を聞かせてください。
三好 個人的にも多くのことを学ばせていただきましたので、今期のC.O.B.U.アクセラレーターでも起案者の方のアイデアをより多く引き出し、第二の佐藤さんを生み出せるよう、全力を尽くしたいと思います。
田代 積水化学さんは大企業ですから、社内にもさまざまな識者や協力者が存在することを今回知りました。つまり、佐藤さんのような巻き込み力を発揮できれば、今期も強い起業家マインドをお持ちの方のお役に立てるのではないかと感じています。
玉井 いろんなバックグラウンドの方がC.O.B.U.アクセラレーターに応募されますから、必ずしも佐藤さんのモデルを当てはめることはできないと思います。しかし、積水化学工業のカルチャーとして前向きな方が多く、そういった熱量を持つ人をどうサポートすべきなのか、今回得た知見は少なくありません。今期のC.O.B.U.アクセラレーターでもそれを生かしながら、より起案者に寄り添った支援を心掛けたいと思います。
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