アーカイブ映像を活用したレクリエーション事業「回想法シアター®」の事業化を支援 | アーキタイプ株式会社

アーカイブ映像を活用したレクリエーション事業「回想法シアター®」の事業化を支援

アーキタイプ株式会社は、関西テレビ放送株式会社が行っている新規事業創出プロジェクト「カンテレイノベーションチャレンジ(KIC)」の事務局に参画し、新規事業創出を支援してきました。2022年には、レクリエーション事業「回想法シアター®」の事業化を支援しています。本事業はどのように事業化されたのでしょうか。関西テレビ放送株式会社 事業局事業開発部 井村慎介氏と、KICを担当したアーキタイプの武佑亮、一柳栞奈にインタビューを行いました。

関西テレビに眠っていたアーカイブ映像を活かしたイベントを企画し、事業化へ

――まずは「回想法シアター®」の事業内容についてお聞かせください。

井村様 「回想法」とは、懐かしい写真や映像、音楽、家庭用品などを見たり触れたりしながら、当時の経験や思い出を語りあう心理療法のひとつです。この回想法のメソッドと、関西テレビのアーカイブ映像を組み合わせたレクリエーションプログラムが「回想法シアター®」です。

現在、1960~70年代の映像を中心に「学校給食」「歳末商戦」「オイルショック」など、テーマごとに50本の映像クリップを制作しています。これを上映し、高齢者を中心とした参加者の皆さんに思い出を語りあってもらうわけです。上映会は、弊社アナウンサーなどが進行するものから、映像のみを提供するものまで、規模やニーズに合わせた形で提供しています。

「回想法シアター®」開催の様子

――「回想法シアター®」は、どういった経緯から生まれたのでしょうか

井村様 もともと私自身が古い映像を見るのが好きなのですが、テレビ番組は一回きりの放送となることが多く、面白い番組を埋もれさせてしまうのはもったいないと感じていました。2019年にアーカイブ関連の部署に異動して、改めて「このアーカイブがあるのも取材させていただいた地域の皆さんのおかげ」だと感じ、なんらかの形で地域に還元できないかと考えていたのです。

そんな中で「回想法」という心理療法を偶然知り、2020年に「回想法シアター®」と名付けた上映イベントを行いました。これが非常に好評で、2年ほど定期的にイベントを開催していたんです。一方で、これをきちんと事業化するには、単発のイベントだけでは難しいという思いもありました。ビジネス的な視点をどう持てばいいのか、事業としてどのような選択肢があるのかを知りたくて、KICに応募することにしました。

――アーキタイプは、どのような形で事業化に携わったのでしょうか。

 アーキタイプは、KICを立ち上げる際に、制度設計の段階から関わり、他社のベストプラクティスも共有しつつ、関西テレビ様に合った形でプログラムを設計しました。応募が始まってからは事務局として携わり、PoC(実証実験)から事業化に至る過程では起案者に伴走してきました。

井村さんからエントリーがあったのは2022年、第2回のKICですね。59件の応募があり、書類審査で6件に絞られました。その後の半年間は、アーキタイプが伴走しながら事業のアイデアをブラッシュアップし、さらに3件が採択され、PoC(実証実験)に進みます。最終的に、2024年に事業化へ至った1件が「回想法シアター®」です。

関西テレビ放送株式会社 事業局事業開発部 井村慎介氏

事業を4タイプに整理し、それぞれの商談相手やタスクを管理する

――書類選考を通過したあと、「回想法シアター®」の事業化はどのように進められたのでしょうか。

井村様 発案者の私と、他部署に在籍する3名とのチームを作り、ブラッシュアップを行いました。「回想法シアター®」という芯を保ちつつ、「映像だけを提供する」「MCを現場の人にやってもらう」など、ビジネスとして成立するパターンを模索していきました。

アーキタイプさんとは隔週〜週1ペースで定例会の場を設けて、ヒアリングで得られた内容などを共有し、次のマイルストーンを示してもらうような形で伴走していただきました。

 基本的には「何をやったのか」「どこで困っているのか」をお聞きして、まだ検討されていない観点や、手を付けたほうがいいことなどをご提示した形です。井村さんのチームがやりたいこと・できることをすり合わせて、「では次のマイルストーンまでにこれをやりましょう」とご提案する、といった関わり方をしていましたね。

井村様 個人的にタスク管理やスケジュール管理が苦手なこともあり、ご迷惑もおかけしましたね……。定例会で示していただいたマイルストーンを元に、いい意味でプレッシャーを感じながら緊張感を持ってタスクを進めていきました。

 そもそも井村さんの事業案はメニューが多く、やり取りする相手も多岐にわたっていました。チームの皆さんと整理した結果、事業タイプが「大規模イベント開催」「小規模イベント開催」「映像と台本の提供」「映像のみの提供」の4つになったのです。会社としてどのタイプを伸ばすのか、優先順位をつけなければなりませんし、タイプ別に商談相手を整理する必要もある。これが結構大変でしたよね。

一柳 通算すると、商談相手の数は50社超、タスクの総数は300超もありました。KICで支援していたチームのなかで、一番多かったと思います。ご支援するにあたり、私が管理用のスプレッドシートを作り、商談相手ごとに進捗やスケジュールをすべてまとめていきました。井村さんのチームはもちろん、事務局の方々など関係者全員が認識を合わせられるように、抜け漏れなく整えることを意識しました。

アーキタイプ株式会社 一柳栞奈

イレギュラーな事態にもフレキシブルに対応

――ブラッシュアップの期間を経て、PoCを進めるなかで苦労された点はありますか?

井村様 PoC期間に入ってから1、2カ月後、私自身が報道部に異動してしまったんです。報道は何か事件が起きた際に対応せねばならないため、アーカイブの部署ほど体の自由が利きません。週1回の定例会は欠かさず出るようにしていたのですが、戦力としては半人前になってしまって。

でもそこで、メンバーの1人である堀田秀治さん(制作技術センター)が、主導権を取って動いてくれました。もともと、映像編集に20年以上携わっていたベテランなんですが、新規事業への想いがとても強いんですね。自らアイデアを出したり、新しいクライアントを見つけてきたりなど、その後のPoCを引っ張ってもらいました。

 堀田さんから「ここは重要な商談なので、アーキタイプさんも同席してほしい」とご依頼を受けて、パートナー企業の事務所へ一緒に訪問したこともありましたね。ずっと映像編集をやられていた堀田さんが、畑違いのセールスやアライアンス交渉にも積極的に関わる姿は、チームの取り組み方にも大きな変化を与えていたように感じます。そのような中で、あるパートナー企業とは、実証実験企画・実施および商用化に向けて週1回の合同ミーティングの実施を打診し、その進行や論点整理を私に任せていただきました。

井村様 KICは通常業務をこなしながら、新規事業創出にも取り組むので、こうしたイレギュラーな事態も起こります。それでもアーキタイプさんは「ここまでしかできません」と線引きをするのではなく、非常にフレキシブルに状況に寄り添っていただけました。個人的な相談にもたくさん乗っていただいて、本当に助かりましたね。

関西テレビ放送株式会社 制作技術センター 堀田秀治氏

個人が発案したアイデアを、ビジネスとして魅力的なものに

――「回想法シアター®」は2024年4月に事業としてスタートしました。現在の状況はいかがですか?

井村様 既に自治体や介護施設などでイベントを何回か実施しています。また、関西テレビのグループ会社が運営するスポーツジムで、映像を懐かしんだあと体を動かして心身をリフレッシュする「懐活(なつかつ)」という取り組みもスタートしました。

これまでイベントMCは弊社のアナウンサーが担っていたのですが、事業化に伴いイベント数が増えたとき、代わりに誰がMCをやるのかが課題でした。そこでスポーツジムのインストラクターさんに映像のプレゼンテーションをお願いしてみたら、とても上手だったんです。参加者の評判も上々なので、今後も広げていけたらと思っています。

――アーキタイプとして、今後の「回想法シアター®」にどのような期待をされていますか?

一柳 「回想法シアター®」の映像を、関東に住む私の祖母にも見せてみたところ、想像以上に良い反応で驚きました。関西の映像ではありますが、全国の高齢者にも通じるものがあると思いますので、いずれは全国に広がるサービスになってもらえたらと思います。

 先ほどのスポーツジムをはじめ、「回想法シアター®」に何らかの実績が生まれれば、関西テレビさまも事業に注力しやすくなりますし、新規事業の成功例としてさらに新しい事業を育てる機運も高まるのではと思います。「あの事業が成功したんだから、これもやってみよう」とチャレンジが生まれるように、先ほど言及したパートナー企業との協業を中心に、まずは目の前のプロジェクトを成功させていきたいですね。

アーキタイプ株式会社 武 佑亮

――最後に、アーキタイプと伴走した期間を振り返って、率直な感想をお願いします。

井村様 アイデアというものは、どうしても独りよがりになりがちだと思うんです。「回想法シアター®」を思いついたときは、「面白いのになぜ伝わらないんだろう」と、もどかしく思うこともありました。裏を返せば、そのまま事業化してもお客様に伝わらないということ。アーキタイプさんには独りよがりのアイデアを、ビジネスとして魅力的に映るレベルにまで育てていただきました。

「回想法シアター®」の本質は、懐かしむことで幸せな気持ちになることにあります。「懐かしむ」は後ろ向きなものではなく、前向きで、心を豊かにしてくれるものです。テレビ局の強みを生かしながら、この楽しみをもっと世の中に浸透させられたらと思います。

 

【関連リンク】
●「回想法シアター®」公式ページ

https://www.ktv.jp/archives/kaisou-theater/

●カンテレが「回想法シアター®」事業を開始 ~アーカイブ映像を利用、健康寿命の延伸の一助に~(プレスリリース)

https://www.ktv.jp/info/ktvinfo/2024/20240329/

 

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