領域トレンドリサーチ

育児領域:メディア・EC

2020/08/11

育児領域の第4回テーマは、「メディア・EC」です。 今回は、育児情報メディアと、育児グッズに特化したECサービスの動向を紹介します。

育児情報メディアの背景

育児にはやるべきことが多く、また初めての経験の場合は特に、何をしたら良いかわからないことも多いです。そのため、情報源として様々な育児情報メディアが求められてきました。近年においては、女性の社会進出、共働き世帯の増加・核家族化、男性の育児参加といった社会的変化に伴い、さらにニーズが高まっています。

育児情報メディアの領域は、スタートアップのみならず、メディア大手や通信キャリアのような、専門外の事業者も参入するようになりました。また、母親だけでなく父親向けに特化したメディアなど多種多様なものが登場し、レッドオーシャン化しています。

育児グッズに特化したECが注目される背景

世界的に見ると、育児グッズの市場は拡大しています。CB INSIGHTSによると2013年から2018年まで年平均4.9%で市場規模が拡大、2018年には$114億ドル(1兆2,218億円)規模になっています。

この要因の1つとして、「育児グッズとECの相性が良いこと」が挙げられます。「サイズが大きくかさばるものが多い(自分で運ぶ手間が大きい)」、「口コミ情報を重要視する」、「実店舗において、幼児の面倒をみながら買い物をする負担」などの理由から、育児グッズはECサイトを通じて購入したいと考える親が多いと考えられます。

こうした背景もあり、2017年8月時点のベビーテックスタートアップ領域における調達額ランキングでは、上位10社のうち6社がECサービスとなっています。

育児情報メディア/EC領域の主要プレイヤー

国内における育児情報メディア、ならびに国外を含めた育児グッズ特化型ECの主要プレイヤーを以下のように分類しました。

育児に関する包括的な情報を発信する総合メディア領域には、主にプロや専門家が情報を発信するメディアから、ユーザーが情報発信を行うCGMまで、幅広いメディアが存在しています。運営母体も、スタートアップだけでなく、小学館の「HugKum」やドコモの「Conobie」といった、幅広い業種、規模のプレイヤーが参入しています。

一方で、特定領域に注力することで独自のポジションを築いているサービスも存在します。例えば、専門家によるアドバイス/相談サービスや、育児世代の主婦対象のコミュニティ/SNS、父親向け育児情報に特化しているプレイヤー等が挙げられます。

育児グッズ特化型ECに関して、海外では中国を中心に多くのプレイヤーが存在していますが、日本国内においてはトイザらスや西松屋などの既存ベビー用品店がECに参入しているに留まり、育児グッズ特化型ECのプレイヤーはまだ少ないようです。

注目サービス・動向

メディア・EC領域で注目するサービスを紹介します。

1. 日本最大級の育児情報メディア「ママリ」

コネヒト社が運営する、育児特化型キュレーションメディアです。Q&Aや記事配信を通じて、ユーザーが出産・育児・ママ友との関係、再就職といった様々な悩みを共有・相談できます。MAUは500万人(2016年時点)、月間投稿数は200万件以上(2020年時点)を誇り、育児特化型メディアとしては日本最大級の規模となっています。

ママリの特徴として、サービス内で形成されるママ友コミュニティのアクティブさが挙げられます。質問投稿のうち回答率は98%以上で、またほとんどの質問は95秒以内に回答されています。こういったアクティブなコミュニティ内でやりとりされる情報は、ユーザーの意思決定に大きな影響を与えており、2016年にママリユーザーを対象に行われた調査によると、ユーザーの90%以上が「ママリの情報をもとに商品を購入したことがある」と回答しています。

またママリは、メディアとしての広告モデルに加えて、2017年にはKDDIと協業し「mamariプレミアム」という有料サービスの提供を開始、フリーミアムモデルでもマネタイズを行うようになりました。プレミアム会員には、月額400円でクーポン提供や検索機能の拡充、期間限定での保険無料加入サービスを提供しています。

2. 芸能人や専門家の意見を収集できるメディア「ママスタジアム」

インタースペース社が運営する育児特化型メディアです。月間800万人以上に利用されており、先ほど紹介したママリと並び、日本最大級の育児特化型メディアと言えるでしょう。

ママリは一般のママが情報を発信していますが、ママスタジアムは、芸能人や育児の専門家による記事やコラムがメインとなっている点が特徴です。

また、掲示板や記事、コラム機能に加え、「ママスタ保活」と呼ばれる保育園を検索できるサービスも提供しています。2019年にリリースされたサービスで、自治体・行政・民間団体ごとに分散している保育園情報をママスタが独自にデータ収集することで、エリア、駅、現在地およびさまざまな保育条件から保育園を検索できるようにしています。

3. 中国発のベビーテックユニコーン「babytree」

中国発、育児コミュニティプラットフォームを中心に、育児グッズ特化型ECサービスも展開する企業です。

2007年に創業された同社は、SNSコミュニティからEC、オンライン教育まで、幅広くベビー・マタニティに関するサービスを提供して市場を牽引しており、コミュニティのユーザーは2018年時点で889万人と、中国でも随一の育児コミュニティになっています。

また、2018年6月にはアリババから出資を受けた際には約21億9,000万ドルの評価額が設定され、ユニコーン企業の仲間入りを果たしました。

このような急激な成長の背景として、中国の育児市場の急拡大があります。中国の育児市場は、毎年16%以上で成長し、2020年の市場規模は64兆円を超えると予測されおり、Babytreeはこの市場拡大の波にうまく乗ったと言えるでしょう。

特筆すべきポイントは、育児コミュニティプラットフォームを介した広告モデルに加え、EC事業も展開することで、収益を大きく拡大させている点です。現在ではEC事業の売上は15.1億円(全体の売上の22.2%)まで拡大し、大きな収益源となっています。

4. 日本発、中国を拠点に拡大するベビーテックサービス「Babily」

最後に、育児動画メディア事業やTaobaoを通じたEC事業を、中国にて展開する日本発のベビーテックサービス「Babily」を紹介します。

Babilyは、ユニ・チャームとBCG Digital VenturesのJVとして設立されたOnedot社によるサービスです。育児や家族生活に役立つ様々なコンテンツやツールを自社で制作・開発し、主に中国のソーシャルメディアや動画プラットフォーム、ミニアプリを通じて展開しています。2020年時点で、既に1,500万人以上のユーザーを抱え、中国の各種ソーシャルメディアランキングの育児/親子領域にてNo.1メディアに選出されるなど、着実に存在感を増しています。

Babilyの成長の理由として、1.日本発でありながらも中国を拠点として事業を展開したこと、2.短尺動画 × 分散型メディアという中国で流行しているメディアスタイルを採用したこと、3.ネイティブアプリではなく、中国でニーズが拡大しているミニアプリを通じてサービスを展開していること、の3つが挙げられます。

1点目に関しては、Babytreeでご紹介した通り、中国における育児市場拡大の流れに乗った市場選択といえます。

2点目、3点目に関して、これはどちらも中国市場に展開する際のメディアのあり方を見極めることの重要性を示しています。育児特化型動画メディアという括りにおいては先行者ではないものの、サービスの提供スタイルをしっかりと対象地域・ユーザーのニーズに合致した形で提供することで、顧客を獲得しています。

まとめ・考察


日本の育児情報メディアの領域は多種多様なプレイヤーが進出しており、レッドオーシャンとなっています。多くのプレイヤーが広告モデルでマネタイズを行う中、フリーミアムモデルやコンテンツの拡充で差別化を図るmamariやママスタジアムを紹介致しました。

新型コロナによる広告宣伝費縮小の流れを受け、今後メディア各社は広告以外でのマネタイズ手法がより求められる可能性があります。

育児メディアのマネタイズ方法として、日本では広告モデルやフリーミアムモデルが主となっていますが、中国におけるBabytreeのように、メディア事業からEC事業へ拡大する手法は、国内でも有効なのではないでしょうか。実際に、育児メディアを通じて得た情報が消費の意思決定に活用されているという調査結果があり、EC事業を展開するポテンシャルは十分にあると考えられます。

ただし、その際は現状の既存プレイヤーである大手ベビー用品店とは異なる価値、例えばユニークなブランドアイデンティティ構築やコミュニティ構築など、EC領域における差別化要因を検討する必要があるでしょう。

日本では育児情報メディアサービスがレッドオーシャン化していますが、Babilyのように、市場が拡大している国での事業展開も有効な戦略であるといえるでしょう。

特に中国では、日本製の育児グッズの人気が高い事も市場の魅力の一つです。中国の越境ECにおける国別売上は日本が1位な上に、化粧品の次に売れているカテゴリがベビー・マタニティ用品であるという調査結果もあります。

後発でも、Babilyのように徹底的に他国の市場に特化し、その地域やカルチャーにうまく合致した方法でサービスを提供できれば、中国に限らず海外市場での事業展開の余地はまだまだ残されているのではないでしょうか。

次回は、保育園などの施設向けサービスに関するトレンドについてご紹介します。

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