領域トレンドリサーチ
領域トレンドリサーチ エンタメ領域
様々な業界/領域におけるテクノロジー導入トレンドを紹介する本連載、第5回はエンタメテックとして注目が集まる、エンタメ領域についてご紹介します。
エンタメコンテンツ市場
まず、本連載でいうエンタメコンテンツ市場とは、IP(Intellectual Property:知的財産権)をもとにしたコンテンツでビジネス展開する市場のことを指します。
経産省の調査によると、2018年における世界のコンテンツ市場は128.8兆円、国内市場は10.6兆円程度の規模があり、国内市場の占める割合は下がってきているものの、非常に大きな市場です。
また、コンテンツの分野別割合の推移を見てみると、世界、日本市場共に映像、出版が大きな割合を占めていますが、今後ゲームコンテンツも大きく成長すると予測されています。
さらに音楽、出版、映像、ゲームについて流通形態をフィジカル/デジタルに区分し、それぞれの構成を比較すると、世界、日本市場共にフィジカル市場が縮小し、デジタル市場が拡大傾向にあります。このようにコンテンツ市場においては、分野を問わず大きなデジタル化の波が訪れています。
デジタル化による業界構造の変化
従来からのエンタメコンテンツ業界構造を簡単に整理すると、IPを利用した「コンテンツ」を作成、それをなんらかの「媒体」にパッケージし、「流通」チャネルを通じて消費者に届けるビジネスモデルになっていました。
しかし、デジタル化によって、従来型のビジネスモデルに大きな変化が生まれています。インターネットやスマートフォン、SNSをはじめとする様々なデジタルデバイスやソフトウェアによって、コンテンツ、媒体、流通がそれぞれ大きく変わったことは、皆さんの実体験からも感じられていることでしょう。
1つめの変化として、無料コンテンツの増加があります。
インターネットやSNSの普及により、海賊版の横行や違法アップロード、著作権的にグレーな二次創作など、多くのコンテンツが複製、共有されていきました。コンテンツ業界は、当初から規制によって従来のビジネス構造を守ろうとし試み、この取り組みは現在も継続している一方で、コンテンツ業界自らがマーケティングやPRを目的として、無料コンテンツを配信する流れも今日では一般的になっています。ビジネスモデルにもよりますが、コンテンツ無料化の流れは今後も止まることはないでしょう。
2つめの変化は、有料プラットフォームの台頭です。
音楽ではSpotify、 映像ではNetflix、出版ではKindleなどに代表されるように、各分野においてデジタルで完結した有料プラットフォーマーが現れています。
彼らは顧客接点を持つことで、様々なコンテンツホルダーのコンテンツを顧客に提供するサービサーですが、コンテンツをただデジタル化して提供するだけではなく、より便利に、より個人の嗜好にあったコンテンツを提供することで、ユーザーを囲い込んでいます。
結果として、コンテンツホルダーは顧客接点をプラットフォーマーに握られ、頼らざるをえない状況となっています。
エンタメ領域の全体像
このようにデジタル化の流れが進み業界構造に大きな変化が生まれているエンタメ領域ですが、
今回はコンテンツの種類に着目し、音楽、出版、映像、ゲームに、スポーツ、音声を加えた6領域に大別して全体像を整理しました。
今回の注目領域
今回の連載では、エンタメコンテンツ市場の中でも以下の5領域に着目し、該当領域のトレンドやスタートアップ/大企業の取り組み事例を紹介、考察します。
- 音声コンテンツ
- 音楽
- 出版
- 映像
- スポーツ
次回は、”1.音声コンテンツ”に関するトレンドについてご紹介します。