イノベーション組織研究24:シティグループ Citi Innovation Lab | アーキタイプ株式会社

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イノベーション組織研究24:シティグループ Citi Innovation Lab

2019/07/17

Citiのイノベーション組織 Citi Innovation Lab

今回は世界160以上の国と地域に約2億の顧客口座を有する世界有数のグローバルバンク、シティグループのイノベーション組織「Citi Innovation Lab」についてご紹介します。

シティグループはマンハッタンに本社を構えており、JPモルガン、バンクオブアメリカ、ウェルスファーゴと並ぶアメリカ四大銀行のひとつです。預金や融資といった伝統的な商業銀行としての機能に加え、M&A仲介や株・債券による資金調達などの投資銀行としても名高い同社ですが、近年は新規事業開発にも力を入れています。

本日紹介するCiti Innovation Labは、グローバルに事業を展開しているシティグループのネットワークを活かし、新しい事業を創出することを目的に設立されました。最初の拠点が2009年ダブリンに設立されたのち、イスラエル、シンガポール、ロンドン、メキシコなどへ拠点を拡大しています。各拠点ではテクノロジーに精通した人材を独自に採用しており、拠点間でも連携しながら新しいビジネスの開発を推進しています。

事業開発テーマは、拠点ごとに地域の特性や環境に合わせて設定されています。今回はその中でも、テルアビブ(イスラエル)とシンガポールに注目し、それぞれのイノベーション創出プロセスと、創出されたプロダクトを紹介します。

Citi Innovation Lab TLV(テルアビブ)

Citi Innovation Lab TLVは、2012年に設立されました。 テルアビブが選ばれた背景には、「FinTechの勃興に伴い、今後イスラエルが重要拠点となる」という前CEOの判断があったようです。

Citi Innovation Lab TLVは、イスラエルが強みを持つAI技術にフォーカスし、テクノロジーで銀行業務を改善するプロダクトの創出を目指しています。

Citi Innovation Lab TLVから誕生したビジネス事例として、プライベートバンク利用者向けモバイルポータル「Citi Velocity」があります。

Citi Velocity

プライベートバンクの利用者や機関投資家向けに取引機能と情報ポータル機能を提供している金融情報プラットフォーム。ヘッジファンドや機関投資家、プロのトレーダーが簡単に取引できるだけでなく、特定地域や世界のニュース、イベント、最新のリサーチ結果などのレポートが配信されている。Citi Innovation Lab TLVではCiti Velocityのモバイルアプリを開発した。

また、Citi Innovation Lab TLVではアクセラレーションプログラムの運営も行なっています。アクセラレーションプログラムは4ヶ月間のプログラムで、各ラウンドに10社程度のスタートアップが採択されます。採択されたスタートアップは、シティグループ内から選抜された社員からメンタリングを受けたり、オフィスを利用したりすることが可能です。

過去のアクセラレーションプログラムにはモバイルペイメント用キーボード作成サービスPayKey、人工知能ベースのコールセンターエージェントVoca、EC配送ソリューションLadingoなどのスタートアップが参加しました。

プログラムに参加中のブランド

ここからは、インキュベータープログラムに参加中のブランドをいくつかご紹介します。

PayKey

Facebook MessengerやWhatsapp、LINEなどのメッセージアプリと連携し、モバイルバンキングサービスをシームレスに利用できるようになるモバイルペイメント・キーボードを開発

Voca
コールセンター向けのチャットボットソリューションを開発。問い合わせ顧客の声をリアルタイムに分析し、会話のピッチやイントネーションを人間同士の会話に近くなるように調整する機能を搭載している

Ladingo
オンラインショッピングの海運コンテナ輸送最適化ソフトウェアを開発。コンテナによる輸送を最適化することで、オンライン小売業者には海外への販売網拡大、輸送業者には効率的なコンテナ輸送の機会を提供。購入者は、これまで難しかった海外の大型製品購入が、透明性が担保された状態で行えるようになる

Citi Innovation Lab Singapore
Citi Innovation Lab Singaporeは2011年に設立されました。同組織はアジア太平洋地域に設立された最初のラボで、シティの法人クライアントが抱える課題を解決するためのソリューション開発を目指しています。シンガポール国立大学や、通信関連の行政機関であるInfocomm Development Authorityとパートナーシップ連携し、新しいプロダクトの実証実験や社会実装に取り組んでいます。

特に、企業の財務管理においてITを駆使しグローバルな全体最適を目指す「トレジャリー・マネジメント」の領域に注力し、企業のCFOや財務担当者をターゲットにしたソリューション開発を行っている点が特徴です。

Citi Innovation Lab Singaporeから誕生したビジネス事例には、企業向け財務管理ソリューション「Citi Interactive Solutions」があります。

Citi Interactive Solutions

ビッグデータ分析、データビジュアライゼーション技術を活用した、企業向けポートフォリオ管理/運転資金シミュレーションサービス。 サービスを利用する企業は、自社の財務管理手法の健全性を同業他社と比較し、数分でより健全にカスタマイズされた財務管理手法を構築することが可能となる

イノベーション組織マッピング


Citi Innovation Labは、基本的に企業内新規事業を生み出す前提で事業開発に取り組んでいますが、イノベーションハブがある地域ではアクセラレーションプログラムを開催するなど、外部との連携もみられます。 また、事業ドメインはシティグループの既存事業である金融事業を拡張するイノベーション創出を対象としています。

まとめ

いかかがでしたか、今回はシティグループのイノベーション組織Citi Innovation Labを紹介しました。

既存事業の顧客基盤や事業アセットを活用し、グローバルイノベーションネットワークを世界各地に展開、時にはスタートアップとも連携しながら地域のエコシステムに基づいた新規事業創出を目指している点は注目すべきでしょう。

参考

Citi Group Blog

The Jerusalem Post

Citi Group Blog

Citi Bank Press

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