領域トレンドリサーチ
育児領域:ベビーモニター
育児領域の第4回は、家の中での見守りサービス、その中でも「ベビーモニター」にフォーカスしてご紹介します。
育児での最も大きい悩みは「常に目が離せない」
パナソニックが実施したアンケート調査によると、育児に関する悩みの第1位は「常に目が離せない」ことでした。
親は、赤ちゃんが寝ている間も、何か異変がないか、ちゃんと寝ているかなどいつも心配しており、心を休めることができません。この悩みを解消するためのツールとして、近年、赤ちゃんを見守るためのベビーモニターの注目度が高まってきています。
米国ではベビーモニターの需要は年々増加しており、現在ではおおよそ3.26億ドル(約300億円)規模の市場となっています。この成長トレンドは今後も続く見込みです。
ベビーモニターの分類
ベビーモニターは、音声のみのオーディオ型、カメラを通して情報を得るカメラ型、赤ちゃんが身につけることでデータを取得するウェアラブル型の大きく3種類に分類されます。
オーディオ型
オーディオ型モニターは、カメラ型やウェアラブル型に比べて比較的安価で、操作がシンプルなため、誰でも使いやすい点が特徴です。スペースを取らず電池式のものも多く、設置が簡易なこともオーディオ型を使用するユーザーが多い一つの要因です。親用端末はリストバンド型のものもあり、赤ちゃんの泣き声などの音を感知すると振動や光でアラートを発します。
カメラ型
カメラ型もオーディオ型と同様に音を感知して親用端末にアラートを発する仕組みが多いですが、スマホアプリや専用のモニターからカメラの映像を見ることができるのが、カメラ型のメリットです。
最近では、画像認識技術の向上により、映像から赤ちゃんの呼吸などバイタル情報を取得し、危険があった際に知らせる機能を持ったカメラ型モニターも登場しています。
ウェアラブル型
靴下や肌着など、赤ちゃんが身につけているものを通して、体温などのバイタルデータを取得し、バイタルに異変があった時にアラートを出すことができるのが、ウェアラブル型の特徴です。
胸の位置にデバイスをつけて呼吸などを記録することができるタイプもあり、ウェアラブル型といっても様々なタイプがあります。カメラ型やオーディオ型などとは異なり、赤ちゃんが身につけることで、より詳細なデータを取得し、状態を把握することができます。
注目サービス・動向
シンプルな操作性、丈夫、安価なオーディオモニター「Beaba」
Beabaは、設定などの手間が少なく、半径300m以内であればどこでもやりとりができるオーディオ型モニターです。特徴としては、防水防塵、ソフトシリコンカバーによりショックに強い、セットで$59.95という安価さなどが挙げられます。商品レビューによると、海外のかなり広い家でも問題なく使えているとのことで、300mという対応範囲の広さの信憑性も高そうです。
画面を見る必要がないため、アラートを受ける親側の端末はリストバンド型など様々な形があり、親は別の作業をしながらでも子どもの異変に気づくことができます。
カメラ型だと情報量が多く、気にしすぎてしまうという親も多く、根強い人気があるモデルです。
布のパターンを読み取って呼吸の状況を把握するNanit
Nanitは、カメラを通して赤ちゃんの睡眠を管理するサービスを提供しています。同社が販売しているパターン(幾何学模様)のついたおくるみ「Breathing Wear」を赤ちゃんに着せ、そのパターンをカメラが読み取ることで、呼吸の状況や、どれくらい睡眠したかなどのデータが取れる仕組みとなっています。
「睡眠時間」「何回起きたか」「(動きから読み取れる)睡眠の質」など、翌日にサマリー情報が親に通知され、取得したデータから睡眠に有効な環境や状態などを提案する機能もあります。
オムツ型ウェアラブルデバイス「P&G Lumi by Pampers」
P&Gが開発した「Lumi by Pampers」は、おむつに装着するセンサーとカメラが連動する、赤ちゃん用のおむつ型ウェアラブルデバイスです。
価格は$349で、おむつの状態、室温、湿度、夜間の動きなどの状況をトラッキングします。動きを検出することで、赤ちゃんの睡眠データも取得でき、おむつが濡れるとBluetooth経由でアプリに通知され、おむつ交換を促す仕組みとなっています。
靴下型ウェアラブルデバイス 「Owlet」
Owletは、靴下に内蔵されたセンサーが赤ちゃんの心拍数、酸素レベルを測定し、異常があればアプリに通知されるウェアラブル型のモニターです。
病院でも長年採用されている「パルスオキシメトリー」という赤色光・赤外光で指等を挟み込むだけで血中酸素濃度を計測できる技術を使って測定するため、赤ちゃんの繊細な肌を傷つけることがありません。
靴下はセンサーを取り外せば洗濯ができ、3つのサイズが用意されているため、赤ちゃんの成長に応じて選ぶことが可能となっています。
画像認識と音声認識だけで呼吸パターンを読み取る「Miku」
Mikuは、赤ちゃんとの身体的接触なしで、カメラの画像認識と音声認識のみで呼吸パターンを読み取ることが可能で、赤ちゃんの呼吸が乱れた場合、スマホアプリへのアラートで親に知らせる機能があります。
カメラを通した音声によるトークや赤ちゃんの動き検知など、カメラ型モニターの基本的な機能は網羅されていることに加え、アプリから赤ちゃんの情報を事細かに見ることが可能な点が評価されており、近年急速にシェアを伸ばしています。
まとめ・考察
ベビーモニターと一口に言っても、赤ちゃんが寝ている間に起きた、寝ているの判断が中心のオーディオ型からバイタルデータを取得し健康状態などを細かくチェックできるウェアラブル型まで多様な種類があります。
ウェアラブル型の場合は、実際に目で見えている状況以外のバイタルデータを取得できるため、今後、赤ちゃんにより快適な睡眠を促進するためのデータが解明されるようになっていくでしょう。
一方で、ベビーモニターから取得できる情報が増えていくにつれ、見守る側が見る情報量の多さ、アラートが来ることに疲弊するという意見もあります。
テクノロジーが発達しモニターに色々な機能が付随していけば、そのデバイスが普及されていく、というわけではなく、今後はユーザーの知りたい情報の量・質・頻度によって、ベビーモニターが選択されるようになっていくのではないでしょうか。
次回は、育児メディア・ECに関するトレンドについてご紹介します。