イノベーション組織研究14:Delta The Hangar | アーキタイプ株式会社

イノベーション組織

イノベーション組織研究14:Delta The Hangar

2019/02/25

“世界で最もイノベーティブな航空会社”デルタのイノベーション組織「The Hangar」

今回は世界最大級の航空会社であるデルタ航空のイノベーション組織「The Hangar」について紹介します。

デルタ航空は2018年、Fast Company誌の「10 Most Innovative Companies in Travel(旅行業界で最も革新的な10社)」に航空会社として唯一選出されています。同社がこのような評価を獲得したことに大きく貢献しているイノベーション組織が今回ご紹介する「The Hangar」です。

The Hangarの設立のきっかけは2015年、デルタ航空がジョージア工科大学に500万ドルを出資したときに遡ります。この出資は、デルタ・ジョージア工科大学・スタートアップの三者がコラボレートするリサーチセンターを創設するために行われました。

デルタ航空とジョージア工科大は、ともに拠点をジョージア州アトランタに置いており、ジョージア工科大は当時から大学の近くに、スタートアップ、企業の新規事業担当者、学生を含む研究者らを囲った事業開発のための集積地「Technology Square(通称Tech Square)」を運営していました。

デルタとしてはこのスタートアップコミュニティにアクセスすることも1つの目的として出資を行い、結果的にThe HangarがTech Square内に設立されました。

The HangarのリーダーはNicole Jonesという女性が務めています。Nicole氏はPwCでキャリアをスタートさせ複数企業でストラテジストとしての経験を積んだ後、2012年にDeltaに入社しました。デジタルコンテンツやリテールのストラテジストを歴任し、2016年にTech Global Innovation Leaderに就任、The Hangarの責任者となっています。

The Hangarの特徴

The Hangarの主な目的は、空港のオペレーション改善や顧客の体験価値向上が見込める新しいサービスを創出することです。

そのためにThe Hangarでは、ストラテジスト・デザイナー・エンジニアがデルタ本体のビジネスユニットと連携し、デザイン思考のメソッドを活用し新規事業創出に取り組んでいます。

The Hangarでは、事業開発のプロセスを「DISCOVER」「DESIGN」「DELIVER」「DECIDE」の4段階で定義しています。

The Hangar内の事業開発は、課題を発見するためのリサーチやユーザーインタビューを実施するDISCOVERフェーズ、調査結果を分析しプロトタイプを構築するDESIGNフェーズ、プロトタイプをユーザーに使用してもらいフィードバックを得るDELIVERフェーズ、ビジネスユニットと連携し、最終的なソリューション開発や拡張方法・発売方法の戦略について決定していくDECIDEフェーズの順に進められていきます。

特にDELIVERフェーズ、DECIDEフェーズでは、プロトタイプが顧客に提供する価値をデータで示す必要があります。開発段階からデータに基づいてしっかりと管理することで、データドリブンな投資意思決定とプロダクト構築を行っています。

また、ジョージア工科大学の学生も積極的にプロジェクトに登用しています。例えば、これまでには工業デザインを専攻している学生をUXデザイナーとしてプロジェクトメンバーに迎えた事例があるようです。

これまでのプロジェクト紹介

The Hangarではこれまでに複数のプロダクトが開発されており、航空業界における優れた施策として賞を受賞したものもあります。また、現在進行中のものを含め、プロジェクトによってはスタートアップとの協業も積極的に行なっています

Nomad

空港のグランドスタッフ向けアプリ。 乗客の座席の変更や再予約、荷物のステータス確認、搭乗券の印刷などがスマホを介して行える。12の米国国内線空港と3の国際線空港に導入。ハリケーン「Irma」「Maria」が直撃した際にその便利さが際立ち、利用客の体験向上に関して優れた施策を提供した航空会社を表彰する「Future Travel Experience Global Awards 2017」の「Best Check-in Initiative」賞を受賞

Pre-Select meal bot

機内食がプレオーダーできるチャットボット。現在は、ビジネスクラスとファーストクラスの乗客が利用できる。搭乗前に機内食を注文できるサービスコンセプト自体は新しいものではないが、Web、メール、SMSなど複数チャネルで利用できるチャットボットとするなど“人間中心設計”をもとにしたユーザビリティを突き詰めた結果、他社と比較しても2倍以上の利用率を達成している

イノベーション組織マッピング


The Hangarでは「空港のオペレーション改善や利用客の体験価値向上が見込めるサービス」の開発を目指しており、本業に近い領域を対象にしていると言えます。また、プロジェクトによってはデルタ工科大学の学生をメンバーとして採用しているなど、比較的オープンな組織となっています。

まとめ

いかがでしたか、今回はデルタ航空のイノベーション組織The Hangarについて紹介しました。

ジョージア工科大学が運営する新規事業創出のための集積地「Tech Square」に入り込み、大学・スタートアップとも連携しながら新規事業創出を目指す座組みは参考になるのではないでしょうか。

 

また、まだまだデジタル化の余地が大きくありそうな空港のオペレーションの領域を牽引するようなサービス開発が実現しており、今後の展開にも注目です。

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