食領域:外食の中食化 | アーキタイプ株式会社

領域トレンドリサーチ

食領域:外食の中食化

2020/04/14

食領域のトレンドを紹介する連載、第2回の今回は最近の外出自粛要請もあり、ますます注目の集まっているフードデリバリー業界についてご紹介します。

フードデリバリー市場の拡大

昨今、活況を呈しているフードデリバリー市場ですが、背景には共働き世帯の増加による自炊時間の減少、惣菜などの中食需要の増加や、飲食店店舗の家賃や人件費などのコスト増による高価格化、など様々な要因があります。

その中でも、Uber Eatsのようなフードデリバリー事業者が配達員と飲食店をマッチングし料理を届けるというシステムを構築したことで、より少ないリソースで自宅に料理が届くようになったことが市場拡大の大きな要因として挙げられます。

フードデリバリーのバリューチェーン変化

通常、飲食店が配達チャネルを通して消費者に料理を提供するには、「商品開発」「調理人員」「キッチン」「配達リソース」の機能が必要です。

従来の飲食店が行う「出前」であれば、商品開発から調理、配達までを、一つの飲食店が自社雇用した人材のみで行っていましたが、現在は商品開発、調理、配達と役割が細分化し、それぞれの事業者がより得意な領域に特化する傾向にあります。

今回、これらの機能ごとに存在するフードデリバリー領域の各プレイヤーを、以下のようにマッピングしました。

配達プラットフォーマーの興隆

UberEatsのような、飲食店と配達員をマッチングし、料理を宅配する配達プラットフォーマーの登場は、フードデリバリー市場の拡大に拍車をかけました。

デリバリーピザがわかりやすい例ですが、これまでのフードデリバリーでは、自社雇用した従業員が料理を配達していました。一方で、マッチングタイプの配達プラットフォーマーは「消費者の注文単位での業務委託」とすることで、配達にかかる料金を注文単位でコントロールできるようになりました。また、この仕組みによって固定の人件費がかからなくなり、多くの飲食店がデリバリーを通じて消費者に料理を提供できるようになりました。

もちろん、マッチングタイプの配達プラットフォーマーにはデメリットもあります。

配達者は、ユーザーの注文がない限り稼働しないため、最低賃金以下の収入しか得られない場合があります。

また一方で、飲食店と配達者には雇用関係がないため、雨などで消費者側の需要が急増した場合に充分な配達リソースが確保できず、飲食店側が注文を受けることができないという問題も発生します。

現在、国内のマッチング配達プラットフォーマーはUber Eatsが一歩抜け出している状況ですが、国産のプラットフォーマーChompyなどの新規参入や、自社雇用型の出前館にLINEが300億円の出資を行うなど大きな動きがあり、今後の動向が注目される領域です。

ゴーストレストランの登場

配達プラットフォーマーの興隆により、実現可能になった業態として「ゴーストレストラン」が挙げられます。

ゴーストレストランとは、特定のキッチンを持たず間借りやシェアキッチンで調理を行い、宅配のチャネルのみを通じて消費者に料理を提供している業態です。

飲食店に必要な内装や客席、お客さんへのサーブなどの業務を省略し、商品開発や調理に特化することで、より安価にクオリティの高い料理を提供することを目的としています。

配達プラットフォーマーが登場したことで、実店舗を持たなくても顧客接点を持つことが容易になり、多くのゴーストレストランが生まれています。

シェアキッチンの登場

ゴーストレストランのオーナーのような、「商品アイデアはあるがキッチンがない」というシェフに対してキッチンを提供し、フードデリバリーサービスを提供できるよう仕立てるサービスがシェアキッチンです。 ゴーストレスランオーナーは、シェアキッチン事業者のキッチンを借りることで、初期費用や家賃を抑えてサービスを開始できます。

シェアキッチン事業者には「自社で借上げた店舗を貸す」タイプと「既存飲食店の空き時間をシェフとマッチングして間貸しする」タイプがあります。

最近では、CLOUD FRANCHISEのように「既存飲食店の余剰人員」と「開発した料理を調理して売って欲しいレストラン」を結びつけることで、互いの利益を上げる仕組みも出てきています。

今後、同様の仕組みで、比較的手が空いている時間帯における飲食店の人員やキッチン設備が、プラットフォームを通じてマッチングされる流れも出てくる可能性もあるのではないでしょうか。

シェアキッチン事業者の海外事例

ここからは、シェアキッチンの海外企業事例についていくつかご紹介します。

KITOPI

ゴーストレストランを拡大したい事業者向けに、プロスタッフとキッチンを提供するサービスです。現在は、中東やアメリカ、イギリスなどでサービスを展開しています。

提携している世界の「パートナーキッチン」のスタッフを教育することで、どのエリアでも伝えられたレシピに基づいた料理を滞りなく提供できるようにしています。
強いブランドを持つゴーストレストランは、今後自社でリスクをとって出店するのではなく、KITOPIのようなサービスを通じてデリバリー店舗をオープンしていくことも考えられます。

KitchenUnited


Kitchen Unitedは、シェアキッチンをサービスとして提供しながらも、自社ブランドでの店舗展開もしている点が特徴的です。また、Kitchen United MIXというサービスでは、キッチンでだけではなく配達まで一気通貫して提供しています。

まとめ・考察


質の高い料理を手軽に自宅で食べられるフードデリバリー事業が成長していく中で、配達プラットフォーマー、ゴーストレストラン、シェアキッチンなど多様なプレイヤーが生まれてきました。

短中期的には各プレイヤーが、遊休アセットを活用して事業を拡大すると考えられます。例えば既存レストランの遊休キッチンの活用や、調理人員などのリソース活用を通じた事業拡大が進むのではないでしょうか。

長期的には、人気のあるゴーストレストランブランドが、既存の飲食店を通じて商品提供することで全国に拡大することも考えられます。また、人気のある飲食店やゴーストレストランブランドが、配達プラットフォーマーの高い手数料を回避するため、ユーザーに直販する流れも生まれてくるでしょう。

 

いかがでしたでしょうか、今回は1.外食の中食化としてフードデリバリー領域を紹介しました。
次回は、2.内食のアップデートについて紹介します。

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