領域トレンドリサーチ

食領域:内食のアップデート

2020/04/22

食領域の第3回テーマは、「内食のアップデート」です。
前回のフードデリバリー業界に関する記事では、主に飲食事業者向けのサービス動向をお伝えしましたが、今回は消費者向けのサービス動向を中心にご紹介します。

中食・内食市場の拡大背景

まず、そもそも「中食」と「内食」はどう違うのか?について解説すると、 「中食」とは飲食店などの家庭以外で調理された食品をテイクアウトまたは配送して家で食べること、「内食」はスーパーなどで食材を買い、家庭で調理して食べることを指します。

中食・内食に共通して、自宅の近辺や自宅の中で食事するニーズは年々高まっていますが、その背景には、人々の暮らし方や働き方、生き方の変化・多様化と、消費者の食サービスに対する受容性・ニーズが高まってきたこと、また良質な中食・内食のサービスが充実してきたこと等が挙げられます。

良質なサービスの充実と、消費者ニーズの高まりのどちらが先だったかは「鶏が先か、卵が先か」の議論になり実態は不明ですが、ニーズの高まりを背景に、飲食店や飲食事業者は様々な新しいサービスを仕掛けています。

また直近では、新型コロナウイルスの影響によって家で食事をとる機会が急増している影響を受け、今後さらに企業・消費者の関心が高まっていくでしょう。

内食領域のバリューチェーン

今回、内食のバリューチェーンを「調達」「献立検討」「調理」「シェア」の4つに分類し、各領域における代表的なプレイヤーを以下のようにマッピングしました。なお、フードデリバリーのような「中食」に近いサービス、ネットスーパーは今回便宜的に除外しています。

ミールキットやレシピサービスなどは比較的認知度が高いと思いますが、アメリカで普及している買い物代行サービスや、中国で普及しているミールシェアサービス等については、国内ではまだ普及しておらずプレイヤーも少ないため、今後の動向が注目される領域です。

また、レシピや調理という機能的な側面だけでなく、健康食・健康管理を特徴として押し出しているサービスも生まれて来ています。


注目サービス・動向

ここからは、アーキタイプが注目する内食領域のサービスや動向について紹介します。

1. ご近所のご飯を食べられるサービス「回家吃饭(Home-cook)」

回家吃饭は、中国のミールシェアサービスです。「ミールシェア」とは、「家庭で作った料理を販売したい人」と「家庭料理を食べたい人」をアプリ上でマッチングするサービスで、いわば家庭料理版Uberです。

新型コロナによる中国国内の規制の影響によって、惜しまれながらも2020年3月31日にサービスを停止しましたが、中国では、本サービスの利用者が300万人以上、料理を提供するホストは2万件以上存在していました。

利用形態としては、①直接ホストの家に行って食べる②お弁当をホストの家に取りに行く③お弁当を配送してもらう、の3パターンがあります。

日本国内にも、Choppyマチルダといったミールシェアサービスがありますが、現在はまだ限定エリアでテスト運用している段階です。既存の飲食店を脅かしかねないサービスではありますが、消費者にとっては様々な料理の選択肢が生まれるメリットがあり、子育てなどが忙しく、外へ働きに出られないような主婦にとっては新たな収益源として期待できるサービスではないでしょうか。

2. 内食プレイヤーの領域拡大

冒頭のバリューチェーンでは、内食サービスを領域別にマッピングしましたが、近年、サービス範囲を隣接領域に拡大する傾向や、初めから複数領域にまたがったサービスを提供する流れが見られます。

例えば、アメリカのtovalaは、スマートオーブンを販売しつつ、レシピ付き食材もサブスクリプションサービスとして提供しています。しかも、オーブンと食材・レシピの連動性が高く、送られてきた食材の包装についているQRコードをスマートオーブンのスキャナーで読み込むと、レシピのデータがスマートオーブンにインプットされ、自動的に調理される仕組みになっています。

オーブンという調理機能を軸にして、食材の調達・レシピの検討まで一気通貫でサービスを提供しているのです。

tovalaのような調理器具メーカーだけでなく、その他の事業者も、既存の事業アセットを軸にしてサービス領域を拡大する傾向が見られます。これは、事業者が新しい収益源を生み出す意図もありつつ、消費者にとって心地よい内食体験を追求した結果、必然的に発生した流れでもあるのではないでしょうか。

3. 「健康」を軸としたサービス

多くのサービスが「食材の調達」や「レシピの提供」といった機能軸を訴求する中、「健康」を軸としたサービスが登場し始めています。これらの一部では、何らかの特徴的な方法でユーザーにパーソナライズしたサービスを提供しています。

例えば、アメリカのHabitというサービスは、「全ての人に通用する健康食はない」という考え方のもと、ユーザーにDNA検査テストを行ない、そのデータを元に最適なレシピと食材を提供しています。

また、国内で展開するシルタスでは、スーパーで買い物した食べ物のデータをアプリが栄養素に変換・記録した上で、ユーザーの栄養状態と食の嗜好性をもとにしたレシピを提案しています。

「食」と「健康」の関係は切っても切り離せません。昔も今も「これを食べておけば健康になる」といった通説がありますが、一方で、健康には個別性があるということも様々な研究や調査で明らかになっており、消費者の健康に関するリテラシーも高くなってきています。

多くのユーザーニーズを満たす内食サービスがある一方で、こだわりや個別性が高く、深いニーズを狙う切り口として、健康系サービスは今後も発展のポテンシャルが高いのではないでしょうか。

まとめ・考察


様々なモノや労働力がシェアの対象になってきている中、ミールシェアのような料理のシェアは提供者側が比較的手軽に始めやすく、また飲食店が近くにない消費者にとってはニーズも一定程度存在するのではないでしょうか。

一方で、国内での展開においては規制面での課題があります。通常、飲食業を営むには食品衛生責任者の資格が必要ですが、一般の方が料理を有料で提供する場合、ミールシェアのプラットフォーマーあるいは料理の提供者いずれかが何らかの衛生基準を担保しなければならないでしょう。サービスを本格展開するにあたり、どのように規制と折り合いをつけていくかについては、検討が必要になってくると考えられます。

家電を軸にした食材・レシピの連動や、レシピサービスを軸にした食材とのセット提供等、これまでバーティカルに展開していたサービスが、隣接領域に広がっていく流れは今後も続くでしょう。場合によっては、合従連衡の可能性も考えられます。

ただし、中長期的に見たときに、調理に関するすべての機能を備えたサービスがいくつか存在するようになった場合、他のサービスとどのように差別化していくのについては検討が必要になってくるのではないでしょうか。

健康志向の高まりを背景に、個人の嗜好性や習慣をベースに、パーソナライズしたサービスが台頭してきました。

業界大手が幅広い客層にリーチする一方で、後発のプレイヤーは特に、狭く深いニーズを突き詰め、よりパーソナライズしていくことが、中長期的な勝ち筋となり得る可能性もあるのではないでしょうか。

いかがでしたでしょうか。次回は、食のサプライチェーンをテーマにした3.流通の最適化に関するトレンドについてご紹介します。

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