領域トレンドリサーチ

食領域:流通の最適化

2020/04/27

食領域の第4回テーマは、「流通の最適化」です。
前回の内食アップデートに関する記事では、主に消費者向けのサービス動向をお伝えしましたが、今回は食品が生産されてから消費者へ届くまでに必要な「流通」関連のサービス動向をご紹介します。

食品流通の全体像

一般に流通業と言えば、小売業や卸売業、物流業など、流通に関わる様々な事業者を指しますが、今回のテーマである「流通最適化」では、そのような流通事業者の業務効率化や、事業者間のプロセスを最適化するサービスについてご紹介します。

まずは、食の流通構造の全体像を見てみましょう。国内における食の流通構造は、農産品、水産品などの種類により、卸売市場の形態や、輸入率、市場外流通の比率には差がありますが、生産者から、集荷者、卸売市場、製造・小売・外食事業者を通じて消費者へ届く大きな流れは共通しており、多段階かつ多くの事業者が存在する構造となっています。今回、これら食品流通の全体像を概略化し、以下のように整理しました。

食の流通の代表的な課題

冒頭で説明したように、食品流通は階層が多く、関係事業者数も多いことから、様々な構造的課題が存在しています。今回、その中でも特に代表的な、「食料廃棄問題」「生産性の低さ」「安全性」に関わる問題を取り上げてご紹介したいと思います。

食料廃棄
本連載の導入記事でもご紹介しましたが、食料の約1/3が流通過程で廃棄されており、SDGsにおいて削減目標が設定されているなど、世界的にも注目されている問題となっています。日本においても、いまだかなりの食料品が流通段階で廃棄されており、削減に向けた対策が急務となっています。

生産性の低さ
受発注の多くは未だ電話やFAX、面談が中心であるなど、オペレーションに多くの時間・コストが費やされおり、比較的儲かりにくい業界構造となっている側面があります。

安全性
流通事業者間での情報が分断しているため、異物混入などの安全性に関わる事故が発生した際に原因が特定しづらいことや、その状況が偽装の遠因となっている可能性が指摘されています。

流通最適化分野のサービスカテゴリと展開領域

ここまでご紹介した課題の解決に取り組むサービスを、下記のように、「産地直送プラットフォーム」「流通効率化」「トレーサビリティ管理」という3つのカテゴリに分類しました。

産地直送プラットフォーム
川上の生産者と、川下の製造・小売・飲食業者や消費者を直接つなぐマーケットプレイスや流通プラットフォームを提供しているプレーヤーです。中間流通業者を排除することで、食料廃棄の減少や、生産者の収入を増加が狙っています

流通効率化
既存の流通網や製造・小売・飲食業者の仕入れを効率化するシステムやソリューションを提供しているプレーヤーです。流通領域の生産性向上を狙っています

トレーサビリティ管理
食品の生産・加工・消費までの移動経路を追跡し、把握可能にするソリューションを提供しているプレーヤーです。サプライチェーンの透明化による食の安全性を確保することを目的としています。

流通最適化分野の注目サービス

ここからは、アーキタイプが注目する、前述のサービスカテゴリに対応した流通最適化分野のサービスについてご紹介します。

1. 産地直送プラットフォームSEND

SENDは、プラネットテーブル社が運営する、生産者と飲食店間の直接取引をサポートする流通プラットフォームです。

希少性が高い食材やこだわりの食材を仕入れたい飲食店と、付加価値の高い農作物の生産に取り組んでいる農家をプラットフォーム上でマッチングさせた上で、SENDのクルーが全国各地の農家から農作物を集荷し、東京近郊の飲食店へ販売しています。

同社の特徴は、都内に自社専用の仕入センターを保有している点です。自社専用センターを活用することで、農作物を全量買い切り、各地からセンターへ集荷した後、当日または翌日のうちに配送するオペレーションが可能となります。また、飲食店の受注データから将来の受注量・品目などを予測し、配送日の10日ほど前には生産者に発注するシステムも運用しています。
さらには、2017年に資金繰りに課題がある生産者向けの短期支払いサービス「FarmPay」の提供を開始しました。これは、購入者からの代金回収と生産者への支払期間のギャップをプラネット・テーブルが負担することで、生産者への支払サイクルを短縮化する仕組みです。
このように、SENDは流通・決済の両軸で新しい流通チャネルの構築に取り組んでいます。

一般的に、SENDを含む産地直送プラットフォーマーの狙いは、既存の流通に存在する多層の中間業者を経由させないことで、生産者のマージンを増加させることです。SENDでは、従来型の流通と比較して農家のマージンを1.5倍に増加させただけでなく、流通段階で発生していたフードロスを1/20に削減した実績もあります。

一方で、ターゲットとする生産者は「こだわりはあるが小規模な農家」の傾向が強いため、スケーラビリティや安定供給に関しては、引き続き検討が必要な課題です。

2. 飲食店向けの鮮魚仕入れソリューション フーディソン

フーディソンは、飲食店向けの鮮魚仕入れECサービス「魚ポチ」や、水産業界の中間流通業者向け情報管理システム「魚ポチPlus」を提供しています。

ユニークなポイントとしては、関連会社の「フーディソン大田」が中央卸売市場大田市場で仲卸免許を保有しており、市場内で物流センター業務と商品開発を実施していることが挙げられます。

既存の水産業界の情報管理を効率化させるシステムを開発しつつ、自ら鮮魚サプライヤーとしても機能することで、流通業務のさらなる効率化を狙っています。

3. ブロックチェーンを活用した食のトレーサビリティ管理システム IBM Food Trust

IBM Food Trustは、ブロックチェーンを活用した食品のトレーサビリティ管理システムです。

食品の生産や流通に関するデータ、検査証明、認定証書などの文書が記録可能なシステムをSaaS形態で提供しています。サプライチェーンの各階層で、事業者が同システムに情報を登録することで、従来は数日間必要としていた経路追跡が数秒で実施可能になります。

これまでに、ウォルマートや海鮮食品メーカーなど様々な企業と連携した実証実験を繰り返しており、トレーサビリティ管理業務の大幅な効率化を実現しています。

まとめ・考察


SENDを提供するプラネットテーブルをはじめ、産地直送プラットフォーマーは、一部農家の収入増加や、消費者・飲食店のこだわりの商品購入ニーズ、フードロスの削減などに貢献しています。現段階で一定の農家・飲食店・消費者には支持されており、各プレーヤーのニーズも深く根強いものであることが予想されます。一方で、ビジネスとしては一定規模以上はスケールし辛い構造となっているといえます。

今後は、希少価値やストーリー性を重視し、産地直送プラットフォームを積極的に活用するような消費者と、従来のような大量生産・大量消費による効率化を求める消費者の二極化が、さらに進んでいくのではないでしょうか。

フーディソンなど流通業務の効率化を狙うサービスは、飲食店の仕入れに関する業務改善ソリューションからサービスを開始し、流通分野全体のさらなる効率化に向け、サプライチェーン内でのカバー領域を拡大する動きを見せています。

着実にサービスを拡大させてきてはいるものの、サービス開始から比較的長い時間が経過していることや、サービス展開領域における既存のビジネス慣習が根強いものであることから、事業拡大にはかなりの時間を要するモデルといえるでしょう。

食品偽装や誤表示問題の解決に向け、ブロックチェーンを活用したトレーサビリティ透明化には大きな期待が寄せられています。特に、今回ご紹介したIBM Food Trustは、これまでに様々な企業と共同プロジェクトに取り組んでおり、一定の成果も挙げています。

今後、この分野のサービスが拡大していくかどうかは、サプライチェーン上の各プレーヤーが該当の食品を検品し、食品の情報をシステムに入力する負荷をいかに下げていくかが論点となりそうです。検品・情報入力業務については、IoTソリューションとも親和性が高いため、ブロックチェーン活用システムとIoTデバイスが連携し、データ入力が自動化される流れが加速していくのではないでしょうか。

いかがでしたでしょうか。次回は、4.食のD2Cブランドというテーマで、食の独自ブランドや新商品開発に関するトレンドをご紹介します。

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