イノベーション組織研究23:クラフトハインツ SPRING BOARD | アーキタイプ株式会社

イノベーション組織

イノベーション組織研究23:クラフトハインツ SPRING BOARD

2019/07/10

クラフトハインツのインキュベーション組織 SPRING BOARD

今回は、ケチャップやチーズで有名な食品会社大手クラフトハインツのイノベーション組織「SPRING BOARD」を紹介します。

クラフトハインツは、2015年にクラフトフーズグループとハインツ社の合併により生まれた企業で、現在世界第5位の食品メーカーです。この合併は、著名投資家のウォーレン・バフェット氏の率いる投資会社バークシャーハサウェイが主導していたこともあり、当時大きなニュースとなりました。

今回ご紹介するインキュベーション組織 SPRING BOARDは、食品・飲料の領域でディスラプティブなブランドを生み出し、拡大させ、加速させるためのプラットフォームとして、2018年シカゴに設立されたばかりの新しい組織です。クラフトハインツと協業しながら新しいブランドを創出出来るパートナーを探し出し、育てることを目的としており、以下の4つの領域を対象としています。

・ナチュラル&オーガニック
・スペシャリティ&クラフト
・ヘルス&パフォーマンス
・エクスペリエンシャルブランド

ブランドのフェーズに合わせた複数のプログラム


SPRING BOARDでは協業するパートナーのフェーズに合わせて「パートナーシップ」「インキュベータープログラム」「アクセラレータープログラム」と3つのプログラムを展開しています。

パートナーシップ
既に成長しつつあるブランドとの長期的なパートナーシップを目指すプログラムです。
クラフトハインツのGo To Marketの経験値、R&D知見、消費者インサイトを活用し、対象ブランドのビジネスを加速させることを目的としています。
事業拡大時の効率的なオペレーション構築、食品安全性の担保など、ブランドが成長するにあたり直面する課題についてもクラフトハインツの経営ノウハウが提供されます。

インキュベータープログラム
これまでのマーケットにない食品/飲料ブランドを作ることを目的とした16週間のインキュベーションプログラムです。
参加ブランドは公募されており、採択されたブランドは、教育プログラム(シニアリーダーによる講義、メディアトレーニング、データアクセス、ビジネスコンサルティング)
クラフトハインツ社員によるメンタリング、専門家とのネットワーク提供などのメリットが得られます。また、$50,000までの資金提供、作業スペース、実験室/キッチンも利用権といった特典も与えられます。
2018年に第1期がスタートし、現在5社が事業開発中です。また、2019年に第2期の採択企業も決定しました。

アクセラレータープログラム

既存ポートフォリオブランドのリフレッシュ、リブランディングを行うためのプログラムです。
プログラム事例として既存ブランド「Boca Burger」のリブランディングがあげられます。Boca Burgerは1993年に生まれた大豆から出来た野菜バーガーのブランドですが、近年は人気が失われていました。そこで最近のミレニアル世代による代替肉ブームにマッチするよう、味と食感の改善、パッケージの改訂を行い、新製品を投入などのリブランディングを実施し、市場に再投入されました。

プログラムに参加中のブランド

ここからは、インキュベータープログラムに参加中のブランドをいくつかご紹介します。

AYOBA-YO
南アフリカ発のブランド。
Biltongと呼ばれるビーフジャーキーのようなスナックを開発。砂糖、グルテン、化学物質不使用で、ビーフジャーキーよりも多くのタンパク質を含む。

CLEVELAND KRAUT
キャベツを発酵させた食品、ザワークラウトのブランド。ファーマーズマーケットでの販売から始まり、現在は米国内で最も成長している発酵食品のブランドの1つとなっている。

QUEVOS
卵の白身から作られたチップスのブランド。低糖質、高タンパク質のスナックで、糖質を制限する必要のある糖尿病患者でも食べることが出来る。

イノベーション組織マッピング


SPRING BOARDは、クラフトハインツ社の既存事業である食品・飲料事業の延長線上での新ブランド開発、ポートフォリオ拡大・成長を目的としているため、領域としては既存ドメインにかなり近いです。また、食品ブランドを立ち上げるために広くパートナーを公募しており、オープンな取り組みであると言えます。

まとめ

いかがでしたか、今回はクラフトハインツのインキュベーション組織SPRING BORADを紹介しました。

パートナーのフェーズに合わせて、複数のプログラムを提供することにより、「スタートアップとマッチングはするものの、その後の事業開発が進まない」「事業部側の引き取り手がない」など、大企業のオープンイノベーションでよく見られる課題を回避する意図を感じます。

 

2018年に始まったばかりの組織、プログラムですので、今後の展開にも注目です。

参考

SPRING BOARD

Brand Channel

Business Wire

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