2026.08.18
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エネルギー・資源の大手24社を有価証券報告書で実数検証、新規事業は「始まるが、利益の地図は変わらない」 ― 業界レポート Vol.5 エネルギー・資源を公開 | アーキタイプ株式会社
電力・ガス・石油元売り・資源開発の大手24社が開示する85のセグメント利益を有価証券報告書から一次集計すると、利益の6割は「額は大きいが薄い国内本業」に残り、率が厚い土地は海外・市況資産と規制外の隣接に限られていました。同時に、各社の新規事業活動は活発でありながら、利益の地図には新しい厚い土地がほとんど増えていません。
事業開発支援のアーキタイプ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:菅野龍彦)は、エネルギー・資源業界の新規事業・多角化に関する業界レポート「Industry Report 2026 Vol.5 ── エネルギー・資源 新規事業・多角化戦略」(全47ページ)を、2026年8月18日(火)に公開しました。本レポートは無料でダウンロードいただけます。
本レポートは、EDINETの業種分類(電気・ガス業/鉱業/石油・石炭製品)58法人から、連結売上1,000億円以上のコア24社を母集団とし、24社が開示する85セグメントを分析しました。財務数値はすべて各社の有価証券報告書(FY2025)をEDINETから機械抽出し、海外参照(Enel・ENGIE・RWE等)はSEC EDGAR・各社開示から一次取得しています。20年の新規事業活動データは公開情報からの当社独自集計です。
主要な発見
1.利益の6割は「薄い国内本業」に、率が厚い土地は限られる。 コア24社の連結売上合計は58.0兆円、営業利益合計は4兆5,445億円(FY2025・一次抽出)。この営業利益とは別に、85セグメント(持株・持分法調整の2を除く83)を資産の性質で4分類し、黒字セグメント利益(合計3兆9,212億円)で構成比を見ると、国内エネルギー本業60.8%・海外/市況資産27.1%・規制ネットワーク6.4%・規制外の隣接5.7%でした(開示準拠のため営業・経常・純利益の3指標が混在)。額の6割を占める国内本業は利益率2.6〜6%と薄く、率が厚い土地は海外・市況資産と規制外の隣接に限られます。送配電などの規制ネットワークが薄い(利益率1〜4%)のは失敗ではなく、収入を「費用+事業報酬(レートベース×事業報酬率1.5%)」で定める制度が「稼がない設計」を選んだ帰結です。

四分類別の黒字セグメント利益(構成比=面積)。国内本業60.8%・海外市況27.1%・規制ネットワーク6.4%・規制外隣接5.7%
2.同じ会社に「2つの時間」が流れている。 送配電・導管のような規制資産は、料金と報酬が制度で決まり、リターンは薄いが安定し、回収は数十年に及びます(遅いクロック)。一方、燃料・発電・海外権益のような市況資産は、価格が市場で決まり、リターンは大きく振れ、参入と撤退のタイミングが損益を左右します(速いクロック)。この2つは評価指標も撤退の考え方も資本の性質も異なります。新規事業の行き詰まりは、自分の事業がどちらのクロックに接続するのかを決めないまま、単一の物差しで測ることに起因する——これが本レポートの中心的な分析です。

四分類別の黒字セグメント利益(構成比=面積)。国内本業60.8%・海外市況27.1%・規制ネットワーク6.4%・規制外隣接5.7%
3.活動は活発なのに、利益地図に新しい土地が増えない。 当社が公開情報から構築した20年間(2006〜2025年)の新規事業活動データベースには、この業界だけで2,367件の活動が記録されています。新会社設立・提携・CVCの設立も相次ぎ、「始める力」も「器」も十分にあります。しかし利益地図と重ねると、始めた事業のほとんどが残っているのに、新しい厚い土地はほとんど増えていないという非対称が浮かびます。当社集計では追跡可能な事業の生存率は96.5%と高い一方、これは撤退が対外開示される例が乏しいことの裏返しでもあり、勝率の高さとは異なります。差が出るのは器の有無ではなく、その中身——何に張るか、いつ畳むか、資本をどう回すか——です。

20年間の打ち手構成——2,367件の活動を型で分ける(新サービス・新市場参入・提携・新会社設立・CVC)
4.脱炭素の空白は「市場の問題」ではなく「設計の問題」。 コア24社の開示セグメントには、脱炭素・再エネで厚く稼ぐものがまだ現れていません。しかしその外側には利益が実在します。海外では再エネが利益の過半を占める大手があり、国内にも再エネ専業で全社セグメント利益の7割超を出す事業者がいます。つまり「脱炭素はまだ儲からない」は正確ではありません。正確には——同じ資産クラスで、利益を出す設計とそうでない設計がある。本レポートは、速いクロックの資産を利益に変える共通の「4つの部品」(価格の固定装置・建設コストの振れの引受け先・資本の回転・出口の事前設計)を抽出し、近年の退出事例(新電力の大量撤退、洋上風力第1ラウンドの中止等)を「欠けていた部品の一覧表」として同じ枠組みで読み解きます。これは世界の資金フローの減速を論じる「失速論」とは別の話で、論じているのは日本企業の開示利益と設計の差分です。
独自フレームワーク:2つのクロック(規制資産/市況資産)× 利益の四分類 × 制度がつくる空白の3層で業界を読み解き、自社の現在地を測る「巻末リトマス10問」を収めています。
代表コメント(菅野龍彦・代表取締役):「25年の制度改革のたびに、この業界では新しい事業機会が語られてきました。実際の利益がいまどこにあり、次はどこへ動くのかを、24社・85セグメントの一次データで測り直したところ、見えてきたのは”始める力はあるが、畳む判断と、事業をどの時間軸に接続するかの設計が足りない”という構造です。これはエネルギーに限らず、制度と市況の両方に晒される事業を持つ多くの日本企業に通じる論点だと考えています。」
Industry Report 2026 シリーズ:Vol.1 半導体・電子部品(Ver.2)/Vol.2 農業/Vol.3 メディア・エンタメ/Vol.4 素材・化学/Vol.5 エネルギー・資源(本日公開)。以降、自動車・機械・食品等を順次公開予定。
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