お知らせ
業界レポート Vol.7「スタートアップ・エコシステム拠点都市 第1期5年の検証」を公開しました ── 自治体が動かせるもの、動かせないもの
日本の大企業の新規事業開発を伴走型で支援するアーキタイプは、業界レポートシリーズ第7弾として「スタートアップ・エコシステム拠点都市 第1期5年の検証 — 自治体が動かせるもの、動かせないもの」を公開しました。内閣府が2020年7月に選定した拠点都市第1期(2020〜2025年度)の8都市圏を対象に、各都市が内閣府に提出した年次の進捗報告(2021〜2024年度)、第2期13拠点の拠点形成計画、厚生労働省「雇用保険事業年報」から当社が算出した47都道府県の開業率、海外の公的機関の年次報告を突き合わせて検証しています。本レポートは都市を採点せず、第1期の検証に範囲を限っています。当社は複数の自治体・外郭団体・民間拠点の取組に参画していますが、分析はすべて公表資料に基づき、参画先で得た非公開情報は用いていません。個別の案件にも言及していません。
主な内容
成果を測る「共通の物差し」が存在しない
内閣府の横断比較表(8都市圏・実績は2023年度末時点・目標年は2024年度末)では、23指標のうち目標到達(達成)は10でした。到達したのはマッチング件数・創出社数などプロセスとすそ野の指標で、未到達はユニコーン・評価額・調達額などバリュエーションの指標です。目標も指標も期中に動き、資料間の数値の不整合が18件見つかりましたが、それを検出し訂正する制度的な仕組みは第1期に存在しませんでした。投入あたりの成果は、公表資料では誰にも計算できません。

プロセス指標は達成、バリュエーション指標は未達 ── 第1期KPIの構図(内閣府横断表・23指標のうち目標達成10/ユニコーン目標6都市圏のうち達成1
自治体が自ら動かせるのは「最初の顧客になる」「実証の場を開く」という固有機能
アクセラレーターや補助金は民間にもできます。行政にしかできないのは「買う」ことと「行政資産を実証の場として開く」ことです。福岡市の公共調達サポート第1号案件のうち、衛星画像による水道管の漏水調査は全国22市町村での実証を経て2025年に商用サービス「mizuiro」となり、AIによる交通量調査「MATIENCE」は2026年3月に東京都が政策目的随意契約で調達しました。実証から調達・継続への転換率を公表する自治体も3系統あり(東京都94%・神戸市70%・全国版46%。定義も母数も違うため比較はできません)、2025年3月に東京都が立ち上げたファーストカスタマー・アライアンス(9自治体)は、初回調達の信用を自治体間で共有する仕組みです。国の調達に占める創業10年未満企業の比率も0.83%(2020年度)から1.39%(2023年度)へ上がりました。

行政にしかできない「最初の顧客になる」機能は、動き始めている ── 福岡市の第1号2件が、商用化と他自治体の調達へ分かれて広がる

行政にしかできない二つの機能は、測られ始めている ── 転換率を公表する3系統と、国の調達比率 0.83%→1.39%
すそ野はストックで決まる ── すそ野の第三者統計では、政策の正の効果を検出できない
雇用保険事業年報から当社が算出した47都道府県の開業率(近似値)で政策前(FY2015〜19平均)と政策後(FY2021〜24平均・FY2020は除外)を比べると、上昇した県はありませんでした。拠点県の低下幅は非拠点県より大きいものの、政策前の水準と変化幅の相関は−0.878で、変化を説明するのは政策の有無ではなく政策前の水準、すなわち40年の政策波の堆積であるストックです。

開業率は47都道府県すべてで低下 ── 上がった県はない(差を説明するのは政策の有無ではなく政策前の水準・相関−0.878)
高さは少数の個社の成否で決まる
ユニコーンや大型調達は、都市単位の集計値が少数の個社に支配されます。単年の指標では年により値が2倍以上振れ、累計の指標では原理的に右肩上がりになります。狙って作れる変数ではなく、市況は水位を、ストックは発生確率を変えるだけです。
使い方と提言
持ち込まれた自治体連携をやるか・やらないか(入口)、形骸化の兆候(運転)、関係を壊さずに畳む方法(撤退)の三つで組み、相手が固有機能をどう設計しているかで期待してよいものが決まる「固有機能×リターン対応表」を収めました。最終章では、自治体・外郭団体の担当者に向けて、大企業のイノベーション組織の設計知(役割・組織・評価)を行政に翻訳した7つの提言を、担当者が庁内で使える「外部の言葉」として置いています。

固有機能×リターン対応表 ── 相手の設計を見れば、期待してよいものが決まる
レポートについて
全47ページ・無料
対象: 内閣府「スタートアップ・エコシステム拠点都市」第1期8都市圏(公表資料による一次確認・2026年8月時点)
Industry Report 2026 シリーズ(既刊)
業界別の新規事業・多角化戦略を一次ソースから整理するシリーズです。
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