業界別レポート
半導体・電子部品はどこで儲かるのか——利益の地図「スマイルカーブ」をセグメント実数で読む
同じ「半導体・電子部品」でも、利益率はセグメントで50pt以上開く(連載・全6回/第2回)
発行: アーキタイプ株式会社 / 2026年7月
シリーズ: 半導体・電子部品 多角化の経済学(第2回/全6回)
半導体・電子部品業界は、一括りに語られがちです。ですが、有価証券報告書のセグメント別営業利益率を並べると、同じ業界のなかで利益率が50ポイント以上も開いていることが分かります。50%を超えるセグメントがある一方で、二桁のマイナスに沈むセグメントもあります。
本記事は、連載第2回として「利益の地図」を扱います。バリューチェーンのどこで利益が生まれ、どこで消えているのか。中核18社のセグメント別実数を、一次データで読み解きます。
利益は、バリューチェーンの「両端」に集まっている
各社のセグメント別の営業利益率を、素材→装置→部品→モジュール→組立というバリューチェーンの上に重ねると、両端が高く中間が沈む「スマイルカーブ」が現れます。

利益率が高いのは、川上と川下の「特化の効く両端」でした。川上の装置・素材と、川下のAI高機能部品・独自技術に利益が集まり、中間の汎用モジュール・組立は低くなります。中核18社のセグメントを営業利益率の順に並べると、次のようになります。
数値はすべて、各社の有価証券報告書(FY2025・2026年3月期など)から機械抽出したセグメント別の実数です。
両端が高い理由は「特化」の効果
川上の装置・素材が高いのは、参入障壁の厚さによります。アドバンテストのテストシステムは、AI半導体の検査という一点に特化し、営業利益率50.9%に達しました。この事業を含む連結の営業利益率は、前期の29.3%から44.2%へと1年で14.9ポイント改善しています。信越化学のエレクトロニクス材料も33.7%と高く、特定の素材で世界的な地位を築くと、利益率は高い水準で安定します。
川下で高いのは、AIや独自技術に特化した高機能部品です。ルネサスの車載(30.7%)、浜松ホトニクスの画像計測(29.6%)、日東電工のオプトロニクス(28.6%)、村田製作所のコンポーネント(27.2%)が並びます。いずれも、他社が簡単には置き換えられない独自技術を持つセグメントです。
中間が沈む理由は「置き換えやすさ」
一方で、バリューチェーンの中間にある汎用モジュール・組立は、利益率が低くなります。ここは製品の差別化が難しく、価格競争になりやすい領域です。
象徴的なのが、村田製作所のデバイス・モジュールです。このセグメントの営業利益率は、前期のプラス1.4%からマイナス4.0%へと転落しました。高い技術を持つ村田でさえ、モジュール化・システム化の領域では利益を出しにくいという事実は、示唆に富みます。ロームのディスクリート半導体もマイナス10.8%と、中間帯の厳しさを映しています。

同じ会社のなかで高収益セグメントと赤字セグメントが併存(村田・浜松ホトニクス・日東電工/FY2025)。レポートより抜粋
「モノを組み合わせて売る」だけでは、利益は残りにくい。利益は、他社が置き換えられない「特化の効く両端」に集まる——これが、実数から見える利益の地図です。
「特化」は、多角化を成功させるための必要条件
セグメントだけでなく、連結の営業利益率で見ても、この傾向は変わりません。分析対象とした56社の連結営業利益率は、20%以上が10社、一桁台が32社、赤字が2社と割れ、中央値は7.1%でした。中核18社に絞ると中央値は11.3%、最高がキーエンスの51.0%、最低がサンケン電気のマイナス5.9%です。同じ「製造業」のなかで、これだけの差が生まれています。

中核18社の連結営業利益率ランキング(FY2025)——最高キーエンス51.0%〜最低サンケン電気マイナス5.9%、中央値11.3%。
この地図が示すのは、「特化」が多角化を成功させるための必要条件だということです。利益の出る両端に、自社の技術で立てているか。まずはそこが問われます。
ただし、特化は必要条件であって、十分条件ではありません。特化していても崩れる会社があります。次回は、同じ次世代パワー半導体(SiC)に投資しながら明暗が分かれた3社を起点に、「特化しても崩れる」条件を解き明かします。
本レポートで用いた「利益の地図」は、半導体・電子部品以外の領域でも、自社の技術優位がバリューチェーンのどこで利益に変わるのかを構造的に整理する道具として使えます。中核18社のセグメント別実数を収録したレポート本体を公開しています。
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