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その赤字は「本業の失敗」か——半導体企業の決算に潜む、減損と構造赤字の読み分け

業界別レポート

その赤字は「本業の失敗」か——半導体企業の決算に潜む、減損と構造赤字の読み分け

同じ「赤字」でも、意味はまるで違う。決算の赤字額だけで会社を評価してはいけない(連載・全6回/第4回)

発行: アーキタイプ株式会社 / 2026年7月
シリーズ: 半導体・電子部品 多角化の経済学(第4回/全6回)

FY2025(2026年3月期など)の半導体・電子部品業界には、目立つ赤字がいくつも並びました。ですが、赤字額の大きさだけを見て会社を評価すると、判断を誤ります。

本記事は、連載第4回として「赤字の読み分け」を扱います。同じ赤字でも、「一時的な会計要因」による赤字と、「本業そのものの構造赤字」はまるで違います。村田製作所・ローム・浜松ホトニクス・サンケン電気の実数から、この読み分けの視点を示します。

大きな赤字が並ぶが、中身は異なる

まず、4社の損失の中身を並べてみます。数値はすべて、各社の有価証券報告書の注記・連結損益計算書から直接抽出したものです。

上の3社と、いちばん下のサンケン電気とでは、赤字の意味がまったく違います。

一時費用型——「痛み」であって「本業の失敗」ではない

上の3社は、いずれも一時的な会計要因による損失でした。

ロームは、SiCの過大投資について、減損損失1,936億円を計上し、親会社株主に帰属する純損失は約1,584億円になりました。金額は業界最大級です。しかしこれは、前中期計画で見込んだ需要が過大だった分の「膿を出し切った」処理でした。その結果、翌期の連結営業利益率は前期のマイナス8.9%からプラス2.3%へと回復しています。

村田製作所は、買収したレゾナント社に関わるのれん438億円を全額減損しました。これは、外部から取り込んだ技術(表面波フィルタ)が、専業の競合がひしめく市場で回収できなかったことによります。前回(第3回)に挙げた「技術オーナーシップの欠如」が、数字に現れた例です。ただし、これも会計上の一時費用であり、村田の連結営業利益率は15.4%と黒字を保っています。

浜松ホトニクスは、買収した事業ののれん残高が約301億円あり、年間約35億円ののれん償却がレーザー事業を直撃しました。統合コストと市況の谷が重なり、連結営業利益率は15.7%から7.6%へ低下しています。

これらはいずれも「痛み」を伴いますが、本業が壊れたわけではありません。

本業構造赤字型——赤字の正体が「本業」そのもの

一方、サンケン電気の赤字は、意味が異なります。連結の営業損失は約47億円、親会社株主に帰属する純損失は約98億円でした。ところが、このうち減損はわずか約4億円です。つまり赤字の大半は、一時的な会計処理ではなく、本業そのものの構造赤字でした。

同じ「赤字を出した会社」でも、ロームや村田のように一時費用で痛みを先に出した会社と、サンケン電気のように本業が沈んでいる会社とでは、事業の診断がまったく変わります。

読み分けを誤ると、会社を取り違える

赤字額の大きさだけで会社を並べると、痛みを出し切って回復に向かう会社(ローム)と、本業が沈み続けている会社(サンケン電気)を、取り違えてしまいます。実際、金額だけを見れば、1,584億円の純損失を出したロームのほうが「重症」に見えます。しかし翌期、ロームは黒字に転じ、サンケン電気はさらに沈みました。

大切なのは、「減損による赤字」なのか、「本業の構造赤字」なのかを、有価証券報告書の注記まで一次データで読み分けることです。この一手間を省くと、投資判断も、事業の立て直しの打ち手も、方向を誤ります。

次回からは、視点を変えます。「どこで儲かるか・どこで沈むか」の分析から、「勝っている会社は、その事業をどう作ったのか」へ。新規事業の作り方に踏み込みます。

本レポートでは、村田・ローム・サンケン電気などの減損・純損益を、有価証券報告書の注記から一次検証し、赤字の内実を読み分けています。決算の数字を「構造」として読み解く視点を、レポート本体で公開しています。

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