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保険会社の新規事業事例 — 東京海上「第3の収益の柱」・SOMPO・第一生命の投資枠

業界別レポート

保険会社の新規事業事例 — 東京海上「第3の収益の柱」・SOMPO・第一生命の投資枠

東京海上は防災・減災を第3の収益の柱に、SOMPOはデジタル事業の中核会社を、第一生命は戦略投資3,000億円の枠を置きました。保険会社の新規事業が、投資の枠と子会社で外に出る型を一次資料で解説します。

発行 : アーキタイプ株式会社 / 2026年10月
シリーズ : 金融・保険業界 越境の非対称 — 事例で読む新規事業の器(第3回 / 全6回)

本連載は、業界レポート Vol.8「金融・保険業界 新規事業・多角化 実態調査レポート」を、事例から読み直す全6回です。レポートの結論は二つあります。金融に入る事業会社は主に提携で入り、金融機関のうち新規事業の器を作る側は、会社を作って外へ出ること。そして、会社を作って出るなら、作る前に畳み方と承継先を決めておくことです。第3回は、保険会社の新規事業事例を、どの器で持っているかから見ていきます。

本連載では、新規事業を持つ会社や枠組みを「器」、器として終えること(解散・売却・合併・本体への吸収を含む)を「畳む」と呼びます。

当社は金融機関の新規事業創出に参画していますが、本連載の分析はすべて公表資料に基づき、参画先で得た非公開情報は用いていません。本連載は公表資料が存在する取組を取り上げたもので、取り上げた会社の優劣を示すものではありません。

保険にも、銀行と同じ形の器がある

保険会社の「本業の外」も、法律で決まっています。保険業法第100条が他の業務を禁じ、第107条が非金融企業への出資を議決権の10%までに限ります。その例外として、第106条第1項第16号に保険業高度化等会社が置かれ、銀行の類型と同じ文言で定義されています。2021年の改正では、銀行と同じく「地域の活性化、産業の生産性の向上その他の持続可能な社会の構築に資する業務」が加わりました。

ただ、レポートが一次資料で確かめた範囲(6軸の公開版)では、保険会社は認可型の器を持たず、投資の枠と子会社で外に出ていました。第一地銀では認可を受けて会社を作る道が広く使われているのに対し、保険の外への出方は投資の枠と子会社が中心です。その中身を、損保2社と第一生命の事例で見ます。

会社

器

外への出方

枠・目標

東京海上ホールディングス

子会社・投資

東京海上レジリエンス(2023年11月設立)・CVCのTokio Marine Future Fund

防災・減災を「保険・資産運用に次ぐ第3の収益の柱」に

SOMPOホールディングス

子会社

デジタル事業の中核会社SOMPO Light Vortex(2021年7月設立)

成長投資に6,000億円規模の経営資源を配賦する方針(2021〜2023年度の中期経営計画)

第一生命ホールディングス

子会社・買収

ベネフィット・ワンの完全子会社化(2024年5月)

戦略投資の枠3,000億円(3年合計)・非保険領域の利益貢献を2030年に10%規模

東京海上:防災・減災を「第3の収益の柱」に

東京海上ホールディングスは、防災・減災ソリューション事業を「保険・資産運用に次ぐ第3の収益の柱」に育てるとしています。国内の防災市場を1兆円超と見積もり、2023年11月に東京海上レジリエンスを設立しました。

器は子会社と投資の二本立てです。CVCのTokio Marine Future Fundは2021年10月に設立され、出資総額は42百万ドルです。2024年11月には東京海上日動火災保険がSakana AIと資本提携し、2025年9月にはホールディングスがOpenAIとの戦略的連携を公表しました。

保険を他社のサービスに組み込む動きもあります。東京海上日動火災保険は2023年5月、投資用不動産サービス「RENOSY」の中で組込型火災保険を始めました。この組込型保険は第5回で扱います。

SOMPOとMS&AD:デジタル事業の中核会社とCVC

SOMPOホールディングスは、2021年3月に「リアルデータプラットフォーム」を始め、同年7月にデジタル事業の中核会社SOMPO Light Vortexを設立しました。2020年6月にはPalantirへ5億ドルを出資しています。2021〜2023年度の中期経営計画では、成長投資に6,000億円規模の経営資源を配賦する方針を示しました。器は子会社です。

投資の器を前面に出す損保もあります。MS&ADインシュアランスグループホールディングスは2018年10月、「日本の保険会社として初のCVC」と位置づけるMS&AD Venturesを設け、2024年12月にファンド規模を4億米ドルへ増やしました。

第一生命と生保:枠・使途・処分を資料に書く

第一生命ホールディングスは、2024〜2026年度の中期経営計画で戦略投資の枠を3,000億円(3年合計)と置き、その使途に非保険領域を明記しました。非保険領域の利益貢献は、2030年に10%規模と置いています。2024年5月にはベネフィット・ワンを完全子会社にしました。

目を引くのは、処分の事実も同じ資料群に載っていることです。2025年には、タイのOcean Life Insuranceの保有全株式を譲渡して資本関係を解消し、それを同じ資料群で開示しています。何に使うかという枠と使途に、何をやめたかという処分が並ぶ例です。

子会社の畳み方を一次資料に残した例は、ほかにもあります。ライフネット生命保険は2026年5月、子会社ライフネットみらい(議決権91.1%)の保有全株式の譲渡と連結除外の予定を開示しました。

生命保険では、投資の器も広がっています。かんぽ生命保険は2023年8月、子会社かんぽNEXTパートナーズと共同でJP LIFE NEXT 1号ファンドを組成しました。T&Dホールディングスは2022年にCVCファンドを設け、投資額は2024年3月期の11件・約14億円から、統合報告書2025時点で約23億円に増えています。保険料の規模に比べれば小さな枠ですが、どの資料に何を書くかは決まっています。

AXA:保険に予防とサービスを足す

欧州のAXAは、保険に予防とサービスを足しています。フランスの個人医療保険に「がん予防」サービスを組み込み、サイバー保険を「保険と予防サービスの組合せ」として提供しています。年次の開示資料(Universal Registration Document 2025)の財務諸表注記19.1.2では、「保険契約以外の収益」を11億4,500万ユーロと分けて開示し、うちアシスタンスが5億300万ユーロです。

東京海上が防災・減災を第3の柱に据え、SOMPOがデータプラットフォームを事業化したのも、保険に予防とサービスを足すAXAの型と同じ方向にあります。レポートが保険に置いた打ち手は、非保険の収益を注記で分けて開示することです。分けて開示しておけば、畳むときも分けて語れます。

自社への問い

  • 非保険の事業の収益を、注記やセグメントで分けて開示しているか

  • 投資の枠と使途と、個別の処分を、同じ資料群に書いているか

  • 予防やサービスを保険に足すのか、保険の外に会社を作るのか。どちらを選んだかをどこに書いたか


本記事は連載「金融・保険業界 越境の非対称 — 事例で読む新規事業の器」(全6回)の第3回です。

連載の全記事:

  1. 銀行の新規事業事例 — 銀行業高度化等会社という器と、金融庁資料に載る18社の現況

  2. 地方銀行の新規事業は、どの器で持つか — 第一地銀54グループの6類型と転換認可

  3. 保険会社の新規事業事例 — 東京海上「第3の収益の柱」・SOMPO・第一生命の投資枠(本記事)

  4. 異業種の金融参入事例 — イオン・セブン&アイ・伊藤忠商事・楽天・ソニーの有報に見る入り方と降り方

  5. 組込型金融(BaaS)の事例 — 楽天銀行・GMOあおぞらネット銀行と組込型保険の接続口

  6. 新規事業の撤退基準をどこに書くか — 東京センチュリーが統合レポートで明文化した例

資料編: 銀行業高度化等会社 一覧(公表ベース70社・根拠URL付き)と101社の6軸

業態別の器の型の分布、損保・生保・相互会社の一社ごとの経過、海外4法域との比較は、レポート本体(全64ページ・無料)に収めています。

→ レポートを読む:https://archetype.co.jp/download/finance

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